太陽光パネルの点検方法|自分でできる日常点検と専門業者が行う定期点検
投稿日:2025年5月15日 | 最終更新日:2025年5月15日
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太陽光パネルは一度設置すれば長期間にわたって安定した発電が期待できるシステムですが、効率的な発電を維持するためには定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。この記事では、自分でできる点検方法から専門業者に依頼すべき内容まで、太陽光パネルの点検に関する情報をできる限り分かりやすく解説します。
太陽光パネルの点検が必要な理由
太陽光発電での投資対効果を最大化し、長く安全に使い続けるためには定期的な点検が欠かせません。なぜ「点検」が重要なのか、その理由を詳しく見ていきましょう。
太陽光パネルの経年劣化と発電効率の関係
太陽光パネルは設置後、徐々に経年劣化が進みます。メーカーの保証期間は一般的に10〜15年程度ですが、実際の寿命は適切なメンテナンスを行うことで30年近く持続させることも可能です。しかし、点検を怠ると徐々に発電効率が低下し、太陽光パネルの寿命も短くなってしまいます。
日々の天候や気温の変化、紫外線による劣化など、太陽光パネルはさまざまな環境要因にさらされています。これらの要因が蓄積されると、パネルの発電効率が徐々に低下していきます。適切なメンテナンスを行うことで、この効率低下を最小限に抑えることができるのです。
定期的な点検を怠ると、発電効率の低下だけでなく、システム内の小さな問題が見過ごされ、やがて大きなトラブルへと発展する可能性があります。また、電気設備である以上、安全面のリスクも無視できません。漏電や火災などの危険性を未然に防ぐためにも、定期的な点検は非常に重要です。
2017年4月に改正された固定価格買取制度(FIT法)では、過去に不具合や事故が増加したことを背景に、太陽光発電システムの保守点検が義務化されました。これは単なる規制ではなく、安全で効率的な運用のために定められたものと言えるでしょう。
点検でどんなトラブルが防げるか?
定期的な点検を行うことで、さまざまなトラブルを未然に防ぐことができます。特に注意すべきなのが「ホットスポット」と呼ばれる現象です。これは太陽光パネルの一部が異常に高温になる状態で、放置すると発電量低下に繋がる恐れがございます。
ホットスポットはパネル表面の部分的な汚れや影、セル内部の欠陥や断線、バイパスダイオードの故障などによって発生します。通常の目視点検では発見が難しいケースもありますが、専門的な点検を定期的に行うことで、このような異常を早期に発見し、大きな事故を未然に防ぐことができます。
また、台風や強風の後は特に注意が必要です。パネルや架台の固定ボルトが緩んでいると、最悪の場合、飛散して周囲に被害を与える危険性があります。さらに、パネルの破損や固定部品の劣化は、雨水の侵入による漏電や感電のリスクも高めます。

画像引用元:今夏、台風による太陽光被害、山間サイトでパネル飛散も(前半) – メガソーラービジネス plus
実際に2024年8月28日頃に発生した台風第10号は、鹿児島県東串良町にある出力1400kWのメガソーラー、宮崎市にある1997.2kWのメガソーラーの太陽光パネルを破損・飛散させ、大きな被害となりました。
※参照:台風10号で九州など、太陽光14件、風力2件が被災 – メガソーラービジネス
固定ボルトの緩みなどは、定期的な目視点検で発見できることが多いため、特に悪天候の前後には確認することをおすすめします。
自分でできる太陽光パネルの日常点検方法
プロに任せなければならない専門的な点検もありますが、太陽光パネルのオーナーである方々でもできる点検はたくさんあります。ここからは、ご自身で実施できる日常点検のポイントをご紹介します。
日常点検の基本と頻度
太陽光パネルの日常点検は、所有者自身でも実施可能です。基本的には月に1回程度を目安に点検することをおすすめします。また、台風や大雨、強風の後にも点検を行うと良いでしょう。季節の変わり目、特に梅雨入り前や冬の前などは、環境の変化によるトラブルが起きやすい時期なので、重点的に確認することをおすすめします。
効果的な点検のためには、デジタルカメラ(スマートフォンでも可)やメモ帳を用意しておくと良いでしょう。特に異常を発見した場合は、その状態を写真に記録しておくと、専門業者に相談する際の参考になります。また、地上から屋根上のパネルを確認する場合は双眼鏡があると便利です。接続箱内部などを確認する場合は、懐中電灯を用意しておくと良いでしょう。
太陽光パネル表面の状態チェック
パネル表面の状態を定期的にチェックすることで、効率低下やトラブルの兆候を早期に発見できます。まず注目すべきは汚れの状態です。パネル表面に鳥の糞や落ち葉が付着していないか、ほこりが蓄積していないかを確認しましょう。特に長期間雨が降らない時期は、汚れが蓄積しやすくなります。

画像引用元:ペンキのようにべったり、発電量を下げる水鳥のフン – 日経クロステック
また、周辺環境の変化も重要なチェックポイントです。新しい建物が建設されたり、近隣の樹木が成長したりすることで、以前はなかった影がパネルに落ちるようになることがあります。こうした変化も発電効率に影響を与えるため、定期的に確認する必要があります。
パネル表面にひび割れがないか、変色している部分がないかも確認しましょう。茶色や黄色の変色は劣化の兆候であり、放置するとさらなる効率低下を招きます。セル間の配線部分に異常な色の変化がある場合も、内部の不具合を示しているかもしれません。
パネル周辺の安全確認
パネルを支える架台やボルト、周辺ケーブルの状態も重要なチェックポイントです。架台に目立った歪みやさびがないか、ボルトやナットに緩みがないかを確認しましょう。パネルと架台の間に異常な隙間がある場合は、固定が不十分である可能性があります。

画像引用元:太陽光パネル架台のサビ落とし – 歯いさい!BLOG
ケーブル類の状態も忘れずにチェックしましょう。ケーブルの被覆に亀裂や劣化がないか、小動物による噛み跡がないかを確認します。特に屋外に露出しているケーブルは、紫外線や雨風にさらされるため劣化しやすいので注意が必要です。コネクタ部分に緩みや腐食がある場合も、接触不良の原因となるため、しっかりと目視で確認しましょう。
発電データのモニタリング
パネルの物理的な状態と同様に重要なのが、発電データのモニタリングです。多くの太陽光発電システムには、発電量を確認できるモニタが付属しています。できれば毎日、難しければ週に1回程度、発電量をチェックして記録することをおすすめします。

画像:弊社の遠隔監視システム「ソーラーモニター」の監視画面
特に注目すべきは発電量の変化です。前年同月の発電量と比較して、20%以上の低下がある場合は何らかの問題が生じている可能性があります。ただし、単純な数値比較だけでなく、季節要因も考慮する必要があります。夏と冬では日照時間が大きく異なるため、発電量に20〜30%程度の差が生じるのは正常です。
異常と判断する一つの目安は、同じ季節・同じような天候での発電量が前年比で20%以上低下している場合です。そのような状況に気づいたら、専門業者への相談を検討しましょう。
自分で行う太陽光パネルのメンテナンス
点検で問題を発見したら、次はその対処法です。太陽光パネルのオーナーとして自分でできるメンテナンス作業もあります。ここでは安全に行える基本的なメンテナンス方法をご紹介します。
パネル清掃の方法
定期的なパネル清掃は発電効率を維持するために重要です。特にパネルの傾斜角が15度以下の場合は、雨水による自然洗浄効果が低いため、定期的な清掃が必要となります。
清掃には柔らかいブラシ(自動車洗車用など)、スクイジー(窓拭き用ゴムワイパー)、マイクロファイバークロスなどを使用するとよいでしょう。水は純水が理想的ですが、一般的な水道水でも問題ありません。ただし、金属製のブラシやスクレーパー、研磨剤入りの洗剤、強アルカリ性洗剤、高圧洗浄機などの使用は避けてください。パネルを傷つけたり、保証が切れる原因になったりする可能性があります。
清掃は早朝または夕方など、パネルが熱くなっていない時間帯に行うことをおすすめします。まず水で全体を濡らして汚れを浮かせ、柔らかいブラシで優しく洗います。その後、水で洗い流し、スクイジーで水気を取り除きましょう。水滴が乾くとシミになる場合があるためです。
清掃作業を行う際は、パネル上に乗らないようにしてください。また、安全のため、地上から届く範囲のみ行い、屋根の上での作業は危険なので専門業者に依頼することをおすすめします。
雑草対策と周辺環境の整備
特に産業用太陽光発電所では、パネル周辺の雑草対策が重要です。雑草が生い茂ると、パネルへの影による発電効率の低下、小動物の住処となることによるケーブル噛み被害、点検・メンテナンス作業の妨げなど、さまざまな問題が生じます。
雑草対策としては、防草シートの敷設、定期的な草刈り、砂利敷きなどの方法があります。敷地の条件や予算に応じて適切な対策を選びましょう。また、近隣の樹木から落ち葉が多く落ちる場合は定期的な清掃を行い、鳥の糞が多い場合は鳥よけ器具の設置を検討するとよいでしょう。
専門業者に依頼すべき定期点検の内容
自分でできる点検とメンテナンスには限界があります。安全性の確保と設備の長寿命化のためには、専門業者による定期的な点検が必要不可欠です。ここでは、プロの技術者に依頼すべき点検内容について解説します。
専門的な点検項目とその必要性
自分でできる日常点検に加えて、定期的には専門業者による詳細な点検が必要です。専門業者は特殊な機器を使って、所有者では発見できない問題を見つけることができます。
特に重要なのが「電気保安点検」です。絶縁抵抗測定は漏電リスクを調べる重要な検査であり、開放電圧測定ではストリングごとの電圧をチェックします。また、接続部の抵抗値測定によって接続不良を発見することも可能です。これらは専門知識と測定機器が必要なため、必ず資格を持った専門家に依頼しましょう。
また、赤外線カメラを使用した点検も有効です。専門業者は赤外線カメラを使って、ホットスポットの検出、バイパスダイオードの故障、クラスタ欠落など、目視では確認できない問題を発見できます。これらの問題は早期に対処することで、大きなトラブルを防ぐことが可能です。
定期点検の適切な頻度
住宅用太陽光発電システム(10kW未満)の場合、設置後1年目に初期不良点検を行い、その後は4年に1回程度の定期点検が推奨されています。また、保証期間終了前(9〜10年目)には詳細点検を行うことをおすすめします。これにより、保証期間内に対処すべき問題を発見し、適切な対応を取ることができます。
一方、産業用太陽光発電システムの場合は、50kW未満では年1回以上、50kW以上では法令により年2回以上の定期点検が義務付けられています(※)。また、設備の規模によっては電気主任技術者による点検が必要な場合もあります。法令を遵守し、適切な頻度で点検を行うようにしましょう。
※参照:太陽光発電システム保守点検ガイドライン – 日本電機工業会・太陽光発電協会
太陽光パネル点検・メンテナンスの費用相場
専門業者に点検を依頼する際には、費用が気になるところです。「思ったより高かった」という事態を避けるためにも、あらかじめ相場を知っておくことが大切です。
住宅用太陽光発電の点検費用
住宅用太陽光発電システム(10kW未満)の点検費用相場は、基本点検料が20,000円程度、パネル清掃が30,000~60,000円程度(屋根の形状や設置条件により変動)、電気測定を含む総合点検が30,000〜50,000円程度となっています。もちろん、地域や業者によって費用は異なりますので、複数の業者から見積もりを取ることをおすすめします。
点検の結果、修理が必要になった場合は追加費用が発生します。パネル交換は1枚あたり50,000〜80,000円、パワーコンディショナー交換は150,000〜300,000円、配線修理は15,000〜30,000円、架台修理は20,000〜50,000円が一般的な費用目安です。ただし、これらも設備の種類や修理内容によって大きく変動しますので、事前に詳細な見積もりを確認することが重要です。
※これらの価格は地域や業者、設備の状態によって大きく異なります。実際の料金は複数の業者から見積もりを取得することをおすすめします。
産業用太陽光発電の点検費用
産業用太陽光発電システムの点検費用相場は、10〜50kW未満で年間100,000〜150,000円程度、50〜500kWで年間200,000〜500,000円程度、500kW以上は設備規模に応じて個別見積もりとなることが一般的です。
産業用太陽光発電では、メンテナンス契約の種類も選択肢となります。スポット契約は必要な時のみ点検・メンテナンスを依頼するもの、定期点検契約は年1〜2回の定期点検を含む基本契約、フルメンテナンス契約は定期点検に加え、故障時の対応や部品交換を含む包括契約となっています。発電所の規模や運用状況に応じて、最適な契約形態を選択するとよいでしょう。
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まとめ
太陽光パネルの点検は、発電効率の維持と安全な運用のために欠かせません。日常的に自分でできる簡単な点検と、専門業者による定期的な詳細点検を組み合わせることで、システムの長寿命化と安定した発電を実現できます。
自分でできる点検としては、パネル表面の汚れや破損のチェック、架台やボルトの緩み確認、発電データのモニタリング、簡単な清掃作業などがあります。一方、電気的な測定・点検、赤外線カメラによる異常個所の特定、パワーコンディショナーの詳細点検、高所作業が必要なパネル点検などは、専門業者に依頼すべき内容です。
太陽光発電システムは適切なメンテナンスを行うことで、30年以上にわたって安定した発電が期待できます。定期的な点検を習慣化して、大切な太陽光パネルを守りましょう。