太陽光パネル点検業者の選び方と費用相場を解説
投稿日:2025年11月25日 | 最終更新日:2025年11月25日
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2017年4月に施行された改正FIT法により、太陽光発電設備の保守点検が法的に義務化されました。しかし、適切な点検を怠ると発電効率の低下や安全性の問題だけでなく、賦課金の一時保留など法的なペナルティを受ける可能性もあります。
本記事では、太陽光パネルの点検業者選びから費用相場、注意すべきリスクまで、専門的な内容を解説いたします。
太陽光発電の点検義務化の全体像

太陽光発電設備の点検義務化は、近年増加している設備事故を背景として実施されました。従来は事業者の自主的な取り組みに委ねられていた保守点検ですが、法的な枠組みによる確実な実施が求められるようになったのです。
改正FIT法による義務化の経緯
2017年4月に施行された改正FIT法では、再生可能エネルギーの適切な事業実施を確保するため、事業者に対して設備の保守点検と維持管理を義務づけました。
この法改正の背景には、太陽光発電設備の急速な普及に伴い、設備事故と地域との摩擦が増加していることがあります。具体的には、配線の劣化や接続不良による火災事故、保守不良による感電事故などが各地で報告されるようになりました。

これらの事故は発電事業者だけでなく、周辺住民にも危害を及ぼす可能性があることから、法的な義務として点検の実施が定められたのです。改正FIT法では、認定を受けた発電設備について、発電事業の終了まで適切な保守保全の実施と記録の保管を発電事業者に義務づけています。
点検義務の法的根拠と関連する法令について
太陽光発電の点検義務に関わる法令は複数存在し、それぞれが異なる視点から規制を行っています。
改正FIT法(再生可能エネルギー特別措置法)
FIT認定を受けた設備の事業者に対して保守保全と年次報告の実施を義務づけています。この法律では、事業計画の遵守義務として電力の安定供給と保守保全が位置づけられており、違反した場合はFIT認定の取り消し処分を受ける可能性があります。
電気事業法施行規則
電気工作物の技術基準適合維持義務が定められており、太陽光発電設備も電気工作物として適切な保守保全が求められています。この法令では、設備の安全性確保の観点から定期的な点検が規定されています。
事業計画策定ガイドライン
具体的な保守点検の方法や頻度、記録の保管方法などが詳細に示されています。このガイドラインは、2017年以降毎年更新しており、事業者が実際に点検を実施する際の具体的な指針となっています。
各法令での規定内容は微妙に異なりますが、いずれも太陽光発電設備の安全で適切な稼働を確保することを目的としており、事業者はこれらすべての要件を満たす必要があります。
点検義務の対象設備と判定基準
太陽光発電設備の点検義務は、すべての設備に一律に適用されるわけではありません。設備の規模やFIT制度の認定状況によって義務の有無や内容が変わるため、ご自身の設備がどのカテゴリーに該当するかを正確に把握することが重要です。
設備規模別の義務適用パターン

点検義務の適用は、主に設備容量とFIT制度の認定状況によって決まります。50kW未満でFIT制度を利用している設備については、改正FIT法に基づく点検義務があります。年1回以上の定期点検と日常的な保守保全の管理が求められます。
50kW未満で自家消費のみを目的とし、FIT制度を認定していない設備については、改正FIT法による点検義務はありません。ただし、電気事業法に基づく一般的な電気設備として保守保全の義務や各地域の条例などは存在します。50kW以上の設備については、FIT制度の認定有無に関わらず、より厳格な点検義務が課せられます。
これらの設備は事業用途としての性格が強く、社会的な影響も大きいことから、月次点検と年次点検の両方が求められる場合があります。

具体的な点検内容と実施方法
必須点検項目8つの詳細
①太陽電池モジュールの破損・ホットスポット確認
太陽光発電システムの点検では、安全性と発電性能の両面から包括的なチェックが必要です。太陽電池モジュールの破損・ホットスポット確認では、パネル表面のガラス割れや樹脂の変色、汚れ、発熱異常を示すホットスポットの有無について赤外線カメラなどを用いて確認します。

ホットスポットは発電効率の低下だけでなく、火災の原因となる可能性もあるため、特に注意深く点検される項目です。
②基礎・架台・取付金具の固定状態点検
基礎・架台・取付金具の固定状態点検では、設備全体を支える構造部分の健全性を確認します。風雨による土砂流失、腐食やボルトの緩み、架台の変形などがないかを詳細にチェックし、必要に応じて締め直しや部品交換などの是正を行います。
③配線・コネクタの状態確認
配線・コネクタの状態確認では、屋外環境にさらされる配線の絶縁被覆の劣化やコネクタ部分の腐食、接続不良がないかを確認します。これらの不具合は感電事故や火災の直接的な原因となるため、電気的な測定も併せて実施されます。
④パワーコンディショナの動作点検
パワーコンディショナの動作点検では、直流を交流に変換する重要機器の動作状況を確認します。表示パネルのエラー表示及び履歴チェック、冷却ファンの動作とフィルター確認、内部の清掃状況なども点検対象となります。
⑤絶縁抵抗値の測定
絶縁抵抗値の測定では、専用の測定器を用いて電気系統の絶縁性能を数値で確認します。この測定により、配線の劣化や水分の浸入による絶縁不良を早期に発見することができます。
⑥接地抵抗(アース)の測定
接地抵抗(アース)の測定では、安全確保のために設置されているアース線の性能を測定します。適切な接地が確保されていないと、漏電時に感電事故が発生する危険性が高まります。
⑦発電量の性能確認
発電量の性能確認では、設計時の想定発電量と実際の発電実績を比較し、システム全体の性能低下がないかを確認します。著しい性能低下が見られる場合は、原因の特定と対策が必要となります。
⑧開閉器・遮断器の動作確認
開閉器・遮断器の動作確認では、緊急時に電気を遮断するための安全装置が正常に動作するかを確認します。これらの装置が正常に機能しないと、事故時の被害拡大につながる可能性があります。
⑨雑草の状況および防草対策
パワーコンディショナなどが故障した際に火災の原因とならないよう、周囲に枯草などの燃えやすいものがないかを確認します。

また、難燃性の防草シートを敷く、砕石を敷き詰めるなど、火が燃え広がらないための対策が適切に実施・維持されているかを目視で確認します。
点検頻度とタイミング
太陽光発電設備の点検は、日常点検と定期点検の組み合わせで実施されます。点検の頻度は設備規模や用途によって異なりますが、いずれも継続的な実施が重要です。定期点検は専門業者による詳細な点検で、年1回以上の実施が法的に求められています。この点検では専門的な測定機器を用いた精密な検査が行われ、設備の総合的な健全性が評価されます。
日常点検と定期点検の違い
日常点検は設備所有者が行う簡易な確認作業で、主に目視による異常の有無と遠隔監視装置の稼働状況を確認します。パネルの汚れや明らかな破損、異音の発生、アラート発報、発電量の著しい低下などを月1回程度チェックします。これにより重大な問題を早期に発見し、専門業者への相談タイミングを判断することができます。

定期点検は専門的な知識と技術を持った業者による包括的な検査です。専用の測定機器を用いた数値による客観的な評価が行われ、将来の故障予測や予防保全の計画立案にも活用されます。この点検では詳細な報告書が作成され、法的な義務履行の証明書類としても重要な役割を果たします。
点検費用の相場と変動要因
設備規模別の費用相場
太陽光発電の点検費用は、設備の規模や点検内容によって大きく変動します。適切な予算計画を立てるためには、相場を理解しておくことが重要です。事業用太陽光発電(50kW未満)では、設備規模の拡大に伴い点検費用も上昇します。
10万円から20万円程度が相場となり、この費用には、目視点検、報告書作成が含まれます。50kW以上の設備では20万円から50万円程度、メガソーラー級の大規模設備では100万円を超える場合もあります。
費用変動の要因
点検費用は複数の要因によって変動します。設備の設置環境も重要な要因で、屋根設置と地上設置では作業の方法や難易度が異なり、特に急勾配の屋根や高所での作業が必要な場合は追加費用が発生することがあります。
設備へのアクセス性も費用に影響します。山間部や離島など、業者の移動に時間がかかる立地では出張費が高くなる傾向があります。また、設備の築年数が古く、特殊な測定や詳細な診断が必要な場合も費用は上昇します。
点検の内容や精度も費用を左右する重要な要素です。基本的な法定点検に加えて、赤外線カメラによる精密診断、ドローンを用いた空撮点検、発電量の詳細解析などのオプションサービスを追加すると、それに応じて費用も増加します。

修理・交換が必要な場合の追加費用
点検の結果、設備に問題が発見された場合は、修理や部品交換のための追加費用が発生します。軽微な不具合の修正であれば数万円程度で済む場合もありますが、主要機器の交換が必要な場合は数十万円から数百万円の費用がかかることもあります。
パワーコンディショナの交換は比較的頻度の高い修理で、機器代と工事費を含めて20万円から50万円程度が一般的です。太陽光パネルの交換が必要な場合は、部分交換であっても足場の設置が必要になることが多く、想定以上の費用がかかる場合があります。
予期せぬ修理費用を避けるため、点検時に将来の修理予測も含めた中長期的なメンテナンス計画を策定し、計画的な予算確保を行うことが重要です。
義務違反のリスクと実際のペナルティ
段階的な行政処分
改正FIT法や電気事業法など各種法令に基づく点検義務を怠った場合、行政機関による段階的な処分が実施されます。最初は指導や勧告から始まり、改善が見られない場合は徐々に厳しい処分が科される仕組みになっています。
軽微な違反や初回の義務不履行に対しては、まず口頭または文書による指導が行われます。この段階では事業者に改善の機会が与えられ、速やかに適切な点検を実施すれば処分は回避できます。
指導に従わない場合や重大な義務違反が確認された場合は、文書による勧告が発出されます。勧告では具体的な改善内容と期限が示され、事業者はこれに従って必要な措置を講じる必要があります。

画像引用:太陽光発電設備等の導入に関する調査」の結果に基づく勧告に対する善措置状況(1回目のフォローアップ)の概要(総務省)
さらに悪質なケースや勧告に従わない場合は、改善命令や賦課金の一時留保が発出されます。この段階では法的拘束力を持つ命令となり、従わない場合は罰則の適用や次段階の処分が検討されます。
最も重い処分としてFIT認定の取り消しや行政処分などがあります。認定が取り消されると売電契約も終了となり、事業継続が不可能や行政処分による氏名の公表があり、事業者だけでなく社会的地位にも致命的な影響をもたらします。
経済的・技術的リスク
点検義務を怠ることで発生するリスクは、行政処分だけでなく多岐にわたります。適切な保守管理を行わないことで、様々な経済的・技術的問題が生じる可能性があります。
発電量低下は最も直接的な経済的損失です。パネルの汚れや機器の不具合を放置することで、設計時の想定を大幅に下回る発電量となり、売電収入や電気代削減効果が減少します。特にホットスポットなどの問題は発電量の大幅な低下につながることがあります。
事故リスクの増大も深刻な問題です。配線の劣化や接続不良を放置することで火災や感電事故が発生し、人命にかかわる重大な事態を招く可能性があります。このような事故が発生した場合、刑事責任や民事責任を問われることもあります。
損害賠償リスクも考慮すべき重要な要素です。設備の不具合が原因で近隣住民や第三者に被害を与えた場合、多額の損害賠償責任を負う可能性があります。特に火災や波及事故などの重大事故では、数千万円から億単位の賠償責任が発生することもあります。
保険適用外となる可能性も重要なリスクです。多くの保険では適切な保守保全を行うことが保険金支払いの条件となっており、点検義務を怠った場合は保険金が支払われない可能性があります。
投資回収への影響
これらのリスクが顕在化すると、太陽光発電投資の収益性に深刻な影響を与えます。発電量の低下による収入減少、予期せぬ修理費用の発生、保険適用外による自己負担の増大などにより、当初計画していた投資回収が困難になる場合があります。
長期的な視点で見ると、適切な点検とメンテナンスにかかる費用は、これらのリスクを回避するための必要経費として位置づけることができ、結果的に投資全体の収益性向上につながると考えられます。
信頼できる点検業者の選び方
業者選定の必須チェックポイント
太陽光発電設備の点検を依頼する業者選びは、設備の長期的な安全性、安定供給性と収益性に直結する重要な決定です。適切な業者を選ぶためには、いくつかの重要なチェックポイントを押さえておく必要があります。
まず確認すべきは、業者の技術的資格と専門性です。電気工事士・電気主任技術者などの資格を持つ技術者が在籍しているか、太陽光発電設備の点検に関する専門的な知識と経験を有しているかを確認しましょう。太陽光発電協会などの業界団体への加盟状況も、業者の信頼性を判断する指標となります。

実績と経験の豊富さも重要な判断材料です。太陽光発電設備の点検実績が豊富な業者は、様々なトラブルや課題への対応ノウハウを蓄積しており、的確な診断と適切な対応が期待できます。同規模・同種の設備での点検経験があるかも確認しておくとよいでしょう。
保険加入状況の確認も欠かせません。作業中の事故や設備への損害に備えた適切な保険に加入している業者を選ぶことで、万が一の事態にも安心して作業を任せることができます。賠償責任保険の補償内容と金額も確認しておきましょう。
点検報告書の質も業者選定の重要な要素です。詳細で分かりやすい点検報告書を作成できる業者は、専門性の高さと顧客への配慮を兼ね備えていると考えられます。過去の報告書サンプルを見せてもらい、内容の充実度や記載の正確性を確認することをお勧めします。アフターサポート体制の充実度も長期的な関係を築く上で重要です。
点検後の質問対応、緊急時の連絡体制、次回点検時期の案内など、継続的なサポートが期待できる業者を選ぶことで、安心して設備運用を続けることができます。
見積もり比較のコツ
業者選定では、複数の業者から見積もりを取得し、価格とサービス内容を総合的に比較検討することが重要です。単純に最安値の業者を選ぶのではなく、提供されるサービスの質と価格のバランスを慎重に評価する必要があります。
見積もりを比較する際は、点検項目の詳細を確認しましょう。同じ「点検」という名目でも、業者によって実施する項目や使用する機器が大きく異なる場合があります。必要な点検項目がすべて含まれているか、追加料金が発生する作業はないかを明確にしておくことが重要です。
極端に安い見積もりを提示する業者については、サービス内容の省略や技術的な不備がないか特に注意深く確認する必要があります。適正価格を大幅に下回る見積もりには、隠れたリスクが存在する可能性があります。報告書の内容や提出時期、アフターフォローの範囲なども見積もり比較の重要な要素です。これらのサービス内容を含めて総合的に判断し、長期的な満足度が期待できる業者を選ぶことが重要です。
まとめ
太陽光発電設備の適切な点検は、2017年の改正FIT法施行により法的義務となりました。この義務化の背景には、設備事故の増加、安全性と安定供給の確保と地域共生の必要性があり、事業者は法的責任として点検を実施する必要があります。
法令違反には段階的な行政処分が科され、最悪の場合はFIT認定取り消しや行政処分となります。また、発電量低下、事故リスク、損害賠償責任、保険適用外などの経済的・技術的リスクも存在し、投資回収や社会的地位に深刻な影響を与える可能性があります。
信頼できる業者選びは、技術的資格、実績、保険加入状況、報告書の質、アフターサポート体制を総合的に評価し、見積もり比較では価格だけでなくサービス内容も含めて総合的に判断することが重要です。
適切な点検とメンテナンスの実施により、法的義務を履行するとともに、太陽光発電事業投資の長期的な成功を実現していきましょう。
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