太陽光パネル点検の義務化や費用相場・業者選びの注意点を解説
投稿日:2025年12月12日 | 最終更新日:2025年12月12日
太陽光パネルは、長期利用できる便利な設備です。しかし、メンテナンスをせずに長期間放置すると発電効率低下や事故リスクにつながります。点検すべきか悩んでいる人のなかには、訪問業者やインターネットの情報などで「点検が義務です」と言われて不安になった人もいるかもしれません。
この記事では、点検が本当に必要な理由や費用相場や義務化の真偽、信頼できる業者の選び方などを解説します。
太陽光パネル点検の必要性
太陽光パネルは、以下の理由により点検が必要です。
- 発電効率の低下を防ぐため
- 安全面(火災・漏電・事故)のリスクを回避するため
- 法律で保守点検が義務化されているため
太陽光パネルは、メンテナンスフリーではありません。劣化や不具合が生じるのを防ぐため、定期点検は必ず実施しましょう。順番に解説します。
1. 発電効率の低下を防ぐため
太陽光パネルは、風雨や砂ぼこり、鳥のフンなどによって表面が汚れ、発電効率が低下します。また、
配線の劣化や接続不良も発電量の減少の原因です。

実際に「10年間一度も点検をしていなかったら、発電量が半分に落ちた」という声も寄せられています。長期間点検を実施しないことによる発電ロスは、多くの太陽光発電システムで起こるでしょう。
定期点検を実施すれば、早期に汚れや不具合を発見でき、最小限のメンテナンスで発電効率を維持できます。
2. 安全面(火災・漏電・事故)のリスクを回避するため
太陽光発電システムは電気設備です。そのため、故障や不具合によって漏電や火災が発生するリスクが伴います。国民生活センター(※)の報告では、パワーコンディショナが10年ほどで故障した事例も報告されています。パワーコンディショナとは、ソーラーパネルで発電した直流電力を交流電力に変換する装置です。
10〜15年が製品寿命とされているため、設置後10年以上が経過した装置は点検や交換をしなければいけません。

また、台風が発生しやすい地域で太陽光発電システムを導入する際は、定期点検やメンテナンスの際に架台のゆるみをチェックしたり暴風対策を強化したりする必要があります。事故が起きると、太陽光発電システムだけでなく近隣や地域への被害にもつながります。定期点検を必ず実施し、安全に太陽光パネルを使用しましょう。
※参照:売電収入をアテにして契約した太陽光発電システムが、10年ほどで故障した。本当に収益が得られるの? – 独立行政法人国民生活センター
3. 法律で保守点検が義務化されているため
太陽光発電の点検は、FIT制度(固定価格買取制度)を利用している発電所を対象に、制度上義務化されています。FIT制度とは、再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が一定期間、国が定めた価格で買い取るしくみです。
FIT制度を利用する場合、たとえ50kW未満の住宅用太陽光パネルであっても、定期的な保守点検と記録保存が法律で義務化されています。
たとえば、50kW未満の低圧の太陽光発電では、設置後1年目と、4年に1回の定期点検が推奨されます。50kW以上の高圧太陽光発電では、以下の頻度での定期点検※を実施しましょう。
- 受変電設備:2〜6ヶ月に1回
- パネル・パワーコンディショナ:6ヶ月に1回
なお、定期点検や維持管理を実施しない場合は、FIT認定基準に適合しないとみなされます。「再生能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」に基づいて、指導や改善命令、FIT認定の取り消され、売電ができなくなる可能性があります。
※参照:太陽光発電システム保守点検ガイドライン – 日本電機工業会・太陽光発電協会 技術資料
太陽光パネル点検の内容と費用相場
太陽光発電システムの点検内容や費用は、設置規模や設置場所の環境条件などで変わります。ここでは、太陽光パネルや点検内容や費用相場、保険の活用方法を解説します。
太陽光パネルの点検内容
太陽光パネルの一般的な点検内容は、以下の通りです。
- パネル表面のひび割れや汚れを目視確認
- パワーコンディショナの動作チェック
- 表示モニターやエラーメッセージの確認
- 配線・接続部の緩みや腐食チェック
簡単な目視確認やモニター異常のチェックはセルフチェックでも可能ですが、電圧測定や配線確認は専門知識と計測器が必要になるため、専門業者に依頼した方が安心です。
産業用太陽光パネル点検の費用相場
太陽光パネルの基本点検費用は1〜5万円程度です。ただし、屋根設置で足場が必要な場合は追加費用が発生する可能性があります。

また、点検の際に故障が見つかった場合は、部品交換や修理費が別途加算されます。さらに、パワーコンディショナの一般的な製品寿命である10年目以降は、点検頻度や内容を見直す必要があります。
なお、点検の頻度は4年に1回程度が推奨されており、FIT制度期間の20年間で、合計5〜20万円程度が必要です。売電収入の一部は、点検や修理交換用の予算として確保しておきましょう。
保険でカバーできる範囲と費用
産業用太陽光発電では、火災保険や動産総合保険によって自然災害による設備損害をカバーできます。

たとえば、台風による飛来物でパネルが破損した場合や、落雷によるパワーコンディショナの故障は動産総合保険の補償対象となります。また、豪雨による浸水被害や、雪の重みによる架台の破損なども保険でカバーされるケースがあります。
さらに、産業用太陽光発電では施設賠償責任保険の加入も重要です。パネルの飛散や設備の不具合により第三者に損害を与えた場合、多額の賠償責任が発生する可能性があります。施設賠償責任保険に加入していれば、このようなリスクにも備えることができます。
ただし、経年劣化やメンテナンス不足による破損は保険対象外となります。また、発電停止による売電収入の損失をカバーするには、別途「利益保険(休業損害補償)」への加入が必要です。
なお、2020年4月に制定された「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」の事業計画策定ガイドラインでは、保険加入が努力義務とされています。適切な保険に加入することで、予期せぬトラブルによる事業リスクを最小限に抑えられます。
個人でできる太陽光パネルの日常点検

専門業者による点検は必須ですが、日常的な簡単なチェックは個人でも可能です。ここでは以下の2点を解説します。
- 個人でできる日常点検項目
- 業者へ依頼する保守点検
日常的にセルフチェックを実施していれば、異常の早期発見につながります。ただし、電気系統をさわる作業は危険をともなうため、必ず専門業者に依頼しましょう。
日常点検項目
一般社団法人日本電機工業会と太陽光発電協会がまとめた「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」では、おもに以下の日常点検の実施を推奨しています。
- 太陽電池モジュール表面の汚れや破損の有無
- パワーコンディショナ通気口のつまりの有無
- ケーブル類の破損の有無
- モニターに異常な表示が出ていないか
- 接続箱の腐食や破損の有無
日常点検は、特別な知識がなくても可能です。しかし、電気回路をあつかう点検は感電の危険があるため、個人で無理に実施してはいけません。セルフチェックは「異常に気づく」ことを目的とし、対応は専門業者にまかせましょう。
業者へ依頼する保守点検
個人でできる日常点検はあくまで目視レベルであり、定期点検は資格を持った業者に依頼しましょう。

ただし、販売店が必ずしも点検の専門知識を持っているとは限りません。不具合を見逃すリスクを回避するためには、認定資格を持つ専門業者に依頼しましょう。太陽光パネルのメンテナンスには、以下のような資格が必要です。
- 太陽光発電メンテナンス技師(JPMA認定)
- 「太陽光発電協会(PIA)の技術認定制度
認定資格を持つ業者であれば、こまかい不具合の発見や適切な修理対応が期待できるため、長期的な安心感を得られるでしょう。
信頼できる業者を選ぶ基準と点検プラン選定
太陽光パネル点検を依頼する際には、業者選びが非常に重要です。ここでは以下の3つを解説します。
- 信頼できる業者を見分ける基準
- 国民生活センターに寄せられた相談事例
- 点検費用を抑えるプラン選定
正しい基準を理解し、トラブルを回避しましょう。
信頼できる点検業者を見分ける基準

信頼できる点検業者の特徴として、おもに以下の点があげられます。
- 不具合発見時に迅速な対応ができる
- 定期的なメンテナンススケジュールを提案する
- 点検報告書を発行する
- 実績を公開している
- 費用体系が明確である
点検の具体的な内容やスケジュールなどを明確に示しているだけでなく、故障した場合の対応や部品交換のスピードは事前に確認しておきましょう。これまでの点検報告書や実績からは、その業者の専門性や信頼性を把握できます。
また、見積もりを依頼する際は、費用体系を明確にしましょう。追加料金の発生条件や、キャンセルポリシーについての確認は必須です。なお、口コミサイトやSNSでの情報収集はもちろん、業者に直接質問すると安心です。
国民生活センターに寄せられた相談事例
国民生活センターには「太陽光パネルの点検が義務化された」と説明され、高額な洗浄やコーティング契約を結ばされたという相談が寄せられています。実際には、その説明が虚偽である場合も多く、消費者トラブルの代表例となっています。詐欺的商法に対抗するためには、その場で契約せずに複数社から見積もりを取りましょう。
不安がある場合は、最寄りの消費生活センターに相談してください。
太陽光パネルの点検費用をおさえるためのプラン選定
太陽光パネルの点検費用をおさえるためには、リース契約やメンテナンス込みの契約プランを選ぶとよいでしょう。リース契約は、事業者から太陽光パネルを借りて設置する方法です。設置にかかる初期費用だけでなく、定期点検や修理費用も含まれるケースが多くあります。ただし、毎月のリース料を支払うため、購入した場合よりも総費用が高くなる可能性もあります。
購入契約の場合は、メンテナンス込みの契約プランがおすすめです。たとえば、長期メンテナンス保証がつくプランであれば、契約期間中の定期点検が無償または低価格になるため、故障時の修理費用がカバーされます。
メンテナンス込みの契約プランは、契約内容によって保証される範囲や費用は異なります。契約に含まれるサービスや、追加で費用が発生するケースを確認しておきましょう。なお、契約前には必ず複数のプランを比較し、自身の発電規模や投資目的に合わせたプランを検討してください。
まとめ
太陽光パネル点検は、発電効率を維持するだけでなく、安全性を確保したり法律を守ったりするために必要です。点検内容や費用相場を理解し、個人でできる日常点検で異常を早期発見したうえで業者に依頼すれば、安心して長期運用ができます。業者を選ぶ際は、信頼できる業者基準を知り、複数社からの見積もりを比較しましょう。
太陽光発電は長期的な投資です。定期的な点検を実施し、発電効率と安全性を守り続けることが、最大のリターンを得るための近道です。



