太陽光パネルの点検義務化で知っておいて欲しいこと。対象範囲や費用・注意点を詳しく解説

投稿日:2025年12月23日 | 最終更新日:2025年12月23日

保守・メンテナンス

太陽光パネルの点検が、2017年の法改正により義務化されたことをご存知でしょうか。「自分が所有している太陽光パネルも対象なの?」「点検って何をすればいいの?」「費用はどれくらいかかる?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。

この記事では、太陽光発電設備の点検義務化の背景、具体的な対象範囲、点検内容と頻度、費用の目安、そして信頼できる業者の見分け方までを徹底的に解説します。太陽光パネルの点検をする際の参考になれば幸いです。

太陽光パネルの点検が義務化された背景

太陽光発電設備を設置・運営する事業者には、定期点検が義務付けられています。点検が義務化された背景には、主に以下の3つの理由があります。

  1. 法律により義務化されたため
  2.  故障による第三者への被害を防止するため
  3. 経年劣化による発電量の低下を軽減するため

ひとつずつ解説します。

1. 法律により義務化されたため

太陽光発電設備の保安確保は、電気事業法第39条において定められています。さらに、2017年に施行された改正FIT法(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)によって、太陽光発電設備の適切な保守管理(O&M)が明確に義務付けられました。O&Mとは、設備が完工・設置された後に、その設備を安全かつ安定的に稼働させ続けるための業務全般です。

特に、定格出力50kW未満の比較的小規模な太陽光発電設備においても「再エネ特措法施行規則」に沿った点検とメンテナンスが義務となり、発電事業者はそのレポートを保存することが求められています。

2.故障による第三者への被害を防止するため

太陽光発電設備が故障したり経年劣化したりした場合、火災や感電といった重大な事故が発生し、近隣住民や第三者に被害が及ぶ可能性があります。

たとえば、強風によってパネルが飛散したり、劣化や清掃不足が原因で太陽光パネルやパワーコンディショナーから出火したりすると、周辺の建物に甚大な被害を及ぼすかもしれません。設備所有者には、事故を未然に防ぐための安全管理責任があります。

3.経年劣化による発電量の低下を軽減するため

メンテナンスをせずに放置していると、パネルの汚れや劣化、機器の不具合などが起きて発電効率が低下します。

これにより、売電収入の減少や、後に大規模な修理による余計なコストが発生します。これは太陽光発電で売電収入を得ようとされている方にとって、大きなリスクです。

一般的に、太陽光パネルの寿命は25年から30年とされていますが、定期的な点検やメンテナンスを行えば、発電効率を維持し、設備の延命につながるでしょう。

太陽光パネルの点検義務の対象範囲

太陽光発電設備の点検義務は、その規模や制度の適用状況によって対象範囲が異なります。

産業用太陽光パネルの点検義務の対象

点検・メンテナンスの義務化は、主にFIT(固定価格買取制度)の適用と、定格出力の規模によって判断されます。

なお、FITとは「Feed-in Tariff(固定価格買取制度)」の頭文字で、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間にわたって買い取ることを国が約束する制度です。

2017年に施行された改正FIT法によって、以前は50kW以上の産業用太陽光発電のみだった義務化の適用範囲が、50kW未満の住宅用太陽光パネルや小規模な産業用設備まで拡大されました。

点検が義務化されないケース

現行の法律において、点検が義務化の対象外となるのは、主に50kW未満でFITを適用していない太陽光発電所です。

ただし、義務化の対象外ではあっても、設備を放置すると、火災や故障などにつながる可能性があります。安全性の確保と発電効率の維持のためにも、義務化の有無に関わらず定期的に点検を行うのがオススメです。

太陽光パネルの点検内容と頻度

点検の基準は、経済産業省が定めた「事業計画策定ガイドライン」と、それに基づく専門的な「太陽光発電 保守点検ガイドライン」によって細かく規定されています。

法令で求められる点検項目

経済産業省の「事業計画策定ガイドライン」では、設備の特性に応じた適切な点検・メンテナンスが求められています。

具体的な方法は太陽光発電協会/JPEA、日本電気工業会/JEMAによって作成された「太陽光発電 保守点検ガイドライン」に記載されています。

主な点検項目は以下の通りです。

  • 太陽光パネルの破損やホットスポットの確認
  •  設備の状態(設備の清掃・交換が適切にされているか)
  •  太陽光パネルがしっかり固定されているか
  •  発電状況

なお、点検項目は専門的な内容のため、講習や試験をクリアし、以下の認定資格を取得した専門業者に任せるのが一般的です。

  • 一般社団法人太陽光発電安全保全協会(JPMA)の認定資格「太陽光発電メンテナンス技師」
  •  太陽光発電協会(PIA)の技術認定制度

発電モニターの確認やパネルの汚れや破損のチェックといった目視点検などを日常的に行っておくと、異常にもすぐに気づけるでしょう。

点検周期とスケジュール例

「太陽光発電 保守点検ガイドライン」では、以下の頻度での電気点検が推奨されています。

  • 出力50kW未満の産業用太陽光発電:4年に1回以上実施
  •  出力50kW以上の太陽光発電:受変電設備の点検を4ヶ月前後に1回、太陽光パネルなどの点検を半年に1回程度実施

電気点検は、専門的な知識と機器が必要であるため、専門業者に依頼します。ただし、発電性能の確認や売電収入を維持するには、設置者自身による日常点検も重要です。

たとえば、月に一度、前年同月の発電量と比較して大きな低下がないかを確認しましょう。地上から機器の外観を見たり、異音・異臭がないかチェックしたりしてください。なお、自身で屋根にのぼって点検を行うのは、危険なため絶対に避けてください。

産業用太陽光パネルの点検費用

ここでは、産業用太陽光パネルの点検費用相場と、費用をおさえる方法を紹介します。

なお、実際にかかる費用は、設置規模や設備の仕様、設置場所の環境条件などによって異なります。具体的な金額を知るためには、専門業者に現地調査を依頼し、見積りをもらいましょう。

産業用太陽光パネルの点検費用相場

産業用太陽光発電にかかる点検費用は、以下の通りです。

  • 出力50kW未満の場合:年間で10万円以内
  • 50kW以上の場合:年間30万円~ ※規模による

出力50kW以上の太陽光発電は電気事業法の対象設備となっています。電気事業法の対象設備とは、発電や蓄電、送電などの電気の使用のために設置する工作物全般です。

また、電気事業法の対象設備は、FIT型にかかわらず電気主任技術者による年2回の点検が義務化されています。なお、点検によって部品の故障が見つかった場合は、修理や交換が必要になり、追加費用が発生します。

信頼できる太陽光発電点検業者の選び方

太陽光発電設備の点検業者の中には、悪質な訪問販売業者や、不必要な修理を過剰に勧めてくる業者もいます。大切な設備を任せるためにも、信頼できる点検業者を見分けるポイントをしっかりと押さえておきましょう。

専門資格と確かな実績が公開されているか

信頼できる太陽光パネル点検業者は、法令やガイドラインに基づいた適正な点検を行うための専門性を明確に証明しています。

まずは、一般社団法人太陽光発電安全保全協会(JPMA)が認定する「太陽光発電メンテナンス技師」や、電気工事士などの国家資格を保有している技術者が在籍しているかを確認しましょう。業者のウェブサイトや会社案内で、保有資格を明示しているかをチェックしてください。

さらに、その業者の点検実績件数や施工事例、保有設備を自社サイトで公開しているかを確認します。実績が豊富な業者は、さまざまなトラブル事例に対応できる知識と経験を持っています。

見積もりの内訳が明確で適正な費用か

信頼できる業者は、点検項目ごと、使用機器ごと、人件費ごとに費用を明確に項目分けして提示します。「一式○○円」とまとめられている場合は、必ず詳細を確認しましょう。

また、業者を選定する際は、必ず複数の業者から相見積もりを取り、価格を比較検討してください。産業用太陽光パネルは、出力50kW未満の場合で年間10万円以内が目安、50kW以上の場合は規模にもよりますが、パネル約500枚規模で年間30万円以上が相場です。相場から大きく外れる場合は、サービス内容を慎重に確認しましょう。

詳細な点検報告書が発行されるか

点検完了後に発行される報告書は、設備の状態を記録し、今後のメンテナンス計画を立てるための最も重要な書類です。

報告書には測定データはもちろん、不具合が見られた部分の写真や位置情報、具体的な改善提案が詳細に記載されていなければいけません。「異常なし」「要修理」といった簡易的な記載ではなく、客観的なデータと写真で示してくれる業者を選びましょう。

また、信頼できる業者は、現状報告だけでなく、次回点検の推奨時期や、定期的なメンテナンススケジュールを提案してくれます。

なお、電気点検は、出力50kW未満の産業用太陽光発電で4年に1回以上の実施が推奨されています。出力50kW以上の場合は、受変電設備の点検を4ヶ月前後に1回、太陽光パネルなどの点検を半年に1回程度実施してください。

故障発生時の対応体制が整っているか

太陽光発電設備の故障や不具合は、発電量の低下により売電収入の減少に直結します。迅速かつ適切な修理対応ができる体制を整えているかは、業者が提供するO&Mサービスの質を左右します。

まずは、点検で発見された不具合や突発的な故障の修理が完了するまでの期間を事前に確認しましょう。交換部品の在庫状況や、緊急時の連絡体制もあわせて確認してください。

また、修理するだけでなく、発電効率の維持を目的としたアプローチができる業者を選びましょう。

契約前の確認

契約前には、契約書に記載された以下の項目を十分に確認しましょう。

  • サービス期間: 点検の頻度、契約期間(1年、3年、5年など)
  • 解約条件: 中途解約時の違約金の有無や金額
  • 保証内容: 点検後の不具合発見時の無償対応範囲、作業に起因する損害の補償範囲
  • 免責事項: 業者が責任を負わない範囲(天災、経年劣化など)

契約書に記載されている専門用語がわからない場合や不明確な内容は、契約前に必ず質問して全て解消してください。

まとめ

太陽光パネルの点検は、2017年の改正FIT法により義務化され、住宅用を含む50kW未満の設備でも対象が広がりました。

点検義務化の背景には、法令による保安確保だけでなく、故障による事故防止や経年劣化による発電量低下をおさえる目的があります。点検では、パネルの破損・固定状況・発電状況などを専門業者が確認し、50kW未満は4年に1回、50kW以上はより頻繁な点検が求められます。

なお、点検業者を選ぶ際には、専門資格の有無や実績公開、見積もりの明確さが重要です。悪質な業者も存在するため、必ず複数の業者を比較検討してください。定期的な点検と日常的なチェックを行い、太陽光パネルの安全性と発電効率を維持しましょう。

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