狙われている!? 続発する太陽光発電設備の窃盗被害
投稿日:2022年4月14日 | 最終更新日:2024年8月5日
│災害対策│
地方では国道や県道など幹線道路沿いの遊休地に設置されるケースも増えている太陽光発電所。近年は車通りが多い場所でも野立てのシステムを見かけるようになりましたが、土地の購入から始めるのであれば、やはり地価の安い場所を選びたいもの。必然的に、山林などが中心となります。
人家や施設が少ない場所への設置は、他人に迷惑がかかるような事態が起こるのを抑えられるメリットがある一方、周囲の目がないため常にリスクに晒されます。その証拠に、このところ太陽光発電所で盗難事件の発生が目に見えて増えてきました。そこで今回は、窃盗の手口や対策についてまとめてみます。
盗まれる太陽光発電設備
全国紙の地方版や地方紙の紙面を見ると、全国各地で太陽光発電所が盗難の被害に遭ったという報道が相次いでいます。インターネットでは一部の報道を読むことができますので、簡単に検索してみましょう。
地方紙・地方版で報道が相次ぐ盗難事件
この2〜3年の間だけでも、多数の事件がヒットします。今月・2022年3月の半ばには、福島県川俣町などの共同出資による企業が運営するメガソーラーで、約1.7㎞分もの送電用銅線が被害に遭ったという報道が※1。先月・2月の上旬には、群馬県みどり市の太陽光発電所で、やはり太陽光パネルをつなぐケーブル20本が何者かに盗まれています※2。いずれもフェンスが設置されていたようですが、窃盗グループはそれを突破して犯行に及んだことになります。
大胆な犯行も後を絶ちません。今年の元旦に発覚した群馬県太田市のケーブル盗難事例※3では、鍵が壊されてフェンスの扉が開いていたことで盗まれたことに気付いたものの、発電量を調べると数日前、つまり前年の暮れから発電量が実に約8割も減っていたことが分かったとか。なお、この施設は、栃木県の足利市が売電事業のために借り受けているものとのことです。
ケーブルだけでなく、太陽光パネルそのものが被害に遭うケースもあります。たとえば、2019年の7月に栃木県那須町で起きた事件では、何と1,700枚以上ものパネルが盗難被害に遭ったとのこと。那須塩原署の発表によれば、この事件での被害額は約2,200万円にも及ぶとされています※4。
続報が見つからない事件が多い中、常習犯が検挙されたケースも。昨年・2021年の1月には、千葉県内の太陽光発電施設でのケーブル窃盗事件で有罪が確定していた茨城県常総市の解体作業員ら3人が、同様の窃盗容疑で千葉地検に追送検されています。グループは60〜70代とのことですが、何と関東5県で220件を超える事件に関与し、被害総額は約1億4,500万円にものぼるとか※5。
山梨県北杜市の銅線ケーブル盗難事件
2024年3月25日、山梨県北杜市須玉町の太陽光発電施設で、数百メートルの銅線ケーブルが盗まれる事件が発生しました。施設の関係者が電気の供給が途絶えていることに気付き、調査したところ、地中に埋められた銅線ケーブルが4か所で切断されており、合計数百メートルのケーブルが盗まれていました。被害額は約20万円と見積もられており、施設側は警察に被害届を提出。この事件は、山梨県内での太陽光発電施設の銅線ケーブル盗難被害が相次ぐ中で発生したもので、今年に入ってからすでに26件、総額8900万円の被害が確認されています。
千葉県野田市の太陽光発電所ケーブル盗難事件
2024年1月、千葉県野田市の2か所の隣接する太陽光発電所から、合計約950メートルの銅線ケーブルが盗まれました。被害額は時価695万円に上ります。群馬県警は、カンボジア国籍の5人をこの事件の容疑で逮捕しました。逮捕された5人の自宅や車からは、銅線ケーブルを切断するためのカッターや目出し帽などが見つかりました。警察は、盗まれた銅線ケーブルがすでに業者に売却された可能性があるとみて、詳しいいきさつを調査中です。
盗まれる理由、狙われる理由
報道によれば、上記の3人の窃盗グループは、犯行理由について「人目に付かず、容易であることから犯行に及んだ」と述べているとか。太陽光発電施設は人里離れた場所に設置されるケースが多い上に、犯行を実行するのは主に発電が停止する夜間。街なかのオフィスビルや店舗などに比べてセキュリティも甘い分、侵入は比較的容易であると言わざるを得ません。
それにしても、前述のような幹線道路沿いの施設ならともかく、日常では目に付きにくい郊外の太陽光発電所を狙うのは、まず探すのが大変なように感じます。上記の茨城県のグループも千葉県内で犯行に及んでいますが、彼らはどう目星をつけているのでしょうか。実は、資源エネルギー庁が発電事業届出事業者の一覧をオンラインで公開しており、1,000件を超える施設のリストが誰でも閲覧が可能となっています。住所まで公開されているため、これらを悪用しているケースも考えられます。
また、稼働中の発電所だけでなく、施工中でも盗難事件は発生しています。上記の通り高価なパネルが盗まれるケースもありますが、重量があるため搬出が困難なほか、シリアルナンバーも刻まれているため転売しにくいとされています。その点、狙われやすいのが送電用ケーブルです。中の銅線が目当てとなりますが、近年の資源価格の高騰で銅も価格上昇の傾向にあり、なおかつ転売が容易なため、はじめからケーブルだけを狙う事件が頻発しているわけです。
被害総額は「見えない部分」まで
ケーブルの盗難と聞くと少し軽く聞こえるかもしれませんが、太陽光発電所の設備ともなると長さがあるため、被害額が数百万円に及ぶケースも珍しくありません。また、犯行グループが粗暴な振る舞いをすればパネルをはじめとする設備や備品などの破損などもあり得ますので、その際は修理や交換の費用も発生することになります。
それと同時に考えなければならないのが、復旧で発電不能な期間の機会損失です。50kW前後の低圧発電所でも、まる一日稼働が停止すれば、時には予想以上の損害が発生することもあります。それが一週間、二週間にも及べば…。設備まわりの直接的な損害だけでなく、こうした「見えない」部分まで加算すれば、被害総額は計算するのも恐ろしい額になるでしょう。
太陽光発電の盗難に備える保険
まず、「火災保険」です。火災保険は、通常、火災、落雷、風災、雹災、水災などの自然災害に加えて、盗難もカバーすることが多いです。例えば、普通火災保険や動産総合保険では、太陽光発電システムの銅線ケーブルやパネルの盗難被害が補償の対象となるものもあります。ただし、近年では一部の保険会社が盗難を補償対象外としているケースも増えているため、契約時には補償内容をしっかり確認することが重要です。
次に、「施設所有者賠償責任保険」です。この保険は、太陽光発電システムが第三者に被害を与えた場合に備えるものですが、一部の保険商品には盗難被害もカバーされる場合があります。例えば、発電所の銅線ケーブルが盗難された結果、近隣の住民や施設に間接的な損害が発生した場合、この保険で補償が受けられることがあります。第三者に被害が及ぶリスクを考慮して、包括的な保険商品を選ぶとよいでしょう。
また、「動産総合保険」も盗難被害に対して有効です。動産総合保険は、太陽光発電システムの設備全般を対象にしており、破損や盗難による損害を補償します。太陽光発電システムは高価な設備であり、特に銅線ケーブルの盗難被害は大きな経済的損失をもたらすため、こうした包括的な保険に加入しておくと安心です。
窃盗を防ぐための自衛策
フェンスの設置
盗難防止の対策としてまず考えられるのが、施設の敷地を囲むフェンスの設置です。山間部の太陽光発電所の場合は「人が近寄ることはない」と高を括ってつけ込まれることもありますので、可能な限り確保しておくべきと言えます。ただ、前述の事件も含めて、盗難事件の多くはフェンスを乗り越えて侵入していることも考慮しておく必要があります。パネルや架台ではなくケーブルを狙う窃盗犯なら、フェンスの犯罪抑止効果は限定的と考えるべきかも知れません。
監視カメラの設置
次に考えられるのが、監視カメラの設置です。最近は住宅街の人家でも購入することが多いことから割と身近な対策で、安価な製品も多数販売されています。太陽光発電所の設計・施工業者に頼めば、24時間364日にわたりリアルタイムで確認できる赤外線の遠隔監視システムなども構築可能ですし、施設の周囲に高精細な画像が得られるストリーミング配信カメラが稼働していることを強く訴える警告を掲出しておけば、一定の効果が期待できます。
専用機器の設置
周囲を映すカメラに加えて、ケーブルに直付けするタイプのセンサーを併用するのも有効です。切断などの異常には即座に反応し、運用コストも低額で済むため、高い費用対効果を発揮します。また、最近ではドローンを活用する方法も実用化しています。こちらは、侵入者の上空でホバリングし、音声や光で警告を発するシステムと考えればよいでしょう。想像するだけで有効性を期待しますが、身近になるにはもう少し時間が必要かも知れません。
根本的な解決は?
さて、ここまで対策を見てきましたが、ひとつ、重大なポイントがあります。それは、犯罪の抑止には役立っても、実行された場合の被害を補填するものではないこと。これに備えるのが、盗難補償保険です。
上記の対策とともに加入しておけば、未然の犯罪抑止と万一の際の補償を両得することができます。ただし、注意点がふたつ。ひとつは、契約や管理が非常に煩雑になること。盗難に遭った際には保険適用の請求が可能だとしても、手続きにはかなりのエネルギーを費やすことになるでしょう。もうひとつは、太陽光発電事業を始めるための予算が高額になること。
一般的なO&M(オペレーション&メンテナンス)サービスを利用して構築することも可能ですが、もっと早い方法があります。弊社では、野立てによる低圧太陽光システムの運営をサポートすることに特化した独自のO&Mサービス『om’s(オムズ)』を展開しています
ワンストップの対策法
独自O&Mサービス『om’s(オムズ)』とは
om’s(オムズ)は、弊社独自に関連サービスをひとまとめにした低圧太陽光システムのための総合的なメンテナンスパックです。自然災害のほか、盗難被害にも対応するサービスが最初からワンストップで組み込まれているのが特徴で、なおかつ「対処すべき状況かどうか」「この状況では何を行うべきか」といった判断を自律的に行いますので、仮に盗難事件が起こったとしてもすべてをお任せいただけます。
om’s(オムズ)のサービス範囲
om’s(オムズ)のサービス範囲は、大きく分けて以下の4つとなります。
- ❶ 運営中の発電所に専用の遠隔監視機器を設置。
- ❷ 遠隔監視機器を稼働、発電状況を常時モニタリング。
- ❸ 異常発生を確認次第、速やかに現地に駆けつけ。
- ❹ 被害状況を確認し、保険対応へと移行。
では、上記のような盗難事件が起こった、あるいは起こった可能性を察知した際に、どう動くのか。ポイントは、以下の2点です。
1.専門家自身がワンストップで対応
O&Mサービスはよく似た内容に見えますが、対処は各社でさまざまです。たとえば「点検」にしても、定期的な実施に限定してコストを下げるサービスがあれば、問題が起きた際に現地に駆けつけて状況を確認することに特化するサービスもあります。om’s(オムズ)では、専用の監視機器でモニタリングを行い、異常を察知した際には内容を判断し、必要な際には専門家が現場に急行。異常の原因を確認し、自ら判断を下した上で、次に取るべき行動へと移ります。
2.保険対応が可能
もうひとつの大きなポイントが、一部の自然災害まで補償範囲となる保険※もワンセットになっている点です。これは、補償だけでなく対応も含むのがポイント。上記の駆けつけサービスで被害を確認した場合は、然るべき機関への通報や関連業者への復旧作業の指示などとともに、部材や工事の見積依頼など保険会社への請求手続きに備えた行動を取ります。交渉や手続きの窓口対応までお任せいただけるのは、特筆しておきたいom’s(オムズ)ならではの強み。請求の手配まで代行しますので、保険会社とのトラブルの心配もありません。
サービスメニューについて
- ❶ om’s(オムズ)プレミアム:月額17,380円(税込)
- ❷ om’s(オムズ)ゴールド:月額10,780円(税込)
- ❸ om’s(オムズ)ベーシック:月額9,680円(税込)
いずれのプランも現状確認費用として申込時のみ110,000円(税込)がかかります。それぞれメニューは異なりますが、月額費用の中に保険代金が含まれるのは共通しています。また、標準サービスのほか、草刈りやパネル洗浄、ドローンによる赤外線検査などオプションサービスも充実していますので、ぜひ詳細をご確認ください。
※om’s(オムズ)で提供する保険は、地震・津波・噴火、戦争・テロなどによる被害は対象外となります。詳細は別途お問合せください。
※1:福島民友新聞 2022年3月17日
https://www.minyu-net.com/news/news/FM20220317-691771.php
※2:上毛新聞 2022年2月10日
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/70217
※3:下野新聞 2022年1月5日
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/539741
※4:日本経済新聞 2019年5月14日
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44807320U9A510C1CC1000/
※5:千葉日報 2021年1月14日
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/756372