太陽光発電のメンテナンス・保守点検は必要?費用、点検内容を解説

投稿日:2024年8月13日 | 最終更新日:2024年8月13日

保守・メンテナンス


太陽光発電の運用を効率的かつ長期的に安全に行っていくためには、「保守点検」と「メンテナンス」が非常に大切です。太陽光発電システムは屋外の自然環境に設置される事が多く、常にさまざまな外的リスクに晒されています。また、ソーラーパネルやパワーコンディショナーの劣化や故障といった内的リスクもあるので、定期的な点検とメンテナンスは欠かせないでしょう。ただ、それらを自分で細かく行うのはハードルが高いので、点検やメンテナンスはもちろん、駆けつけサービスなどまでまとめて対応してくれるO&Mサービスを活用するのも一つの方法です。点検とメンテナンスの違いも含めて、今回は太陽光発電のメンテナンスや保守点検の必要性について紹介していきます。

■太陽光発電の保守点検とメンテナンスの違い

太陽光発電を運用していく上で「保守点検」と「メンテナンス」は必要不可欠であるので、それぞれの内容や役割の違いについてはきちんと理解しておくべきです。保守点検は、設備の破損や機器の故障の有無などを中心に太陽光発電システムの全体的な状態を細かくチェックし、異常が起こっていないかを確認するもの。
一方、メンテナンスは、太陽光発電システムに不具合が発生した場合や性能の低下が見られた場合に行われる修理や調整などの手入れ作業を指します。ソーラーパネルの修理や清掃、パワーコンディショナーの清掃や点検、より効率を向上させるためのアップグレードもメンテナンスの一部と言えます。
また、2017年4月1日に経済産業省より施行された「改正FIT法(固定価格買取制度)」により、それまではFIT認定を受けた出力50kW以上の太陽光発電のみとされていたメンテナンスの義務化の対象が、FIT認定を受けた全ての太陽光発電に拡大されました。これにより、メンテナンス及び保守点検の重要性はさらに高くなったと考えられます。

■太陽光発電の保守点検とメンテナンスの必要性

定期的な保守点検によって事故や故障といった問題を未然に防ぎ、必要に応じてメンテナンスを行うことで太陽光発電システムの長寿命化と効率的な運用が実現できます。太陽光発電システムの長期的かつ安全な運用においては、どちらも欠かせない需要な役割を果たしていると言えるでしょう。保守点検とメンテナンスの必要性としてどのような点が挙げられるのか、具体的にいくつか紹介していきます。

故障の予防のため

太陽光発電システムは屋外に設置されているため、火災、台風、落雷、豪雨、豪雪といった自然災害によるソーラーパネルの破損や落下などのリスクに常に晒されています。それ以外にも、ケーブル配線や機器の劣化、パワーコンディショナーやソーラーパネルの故障などが発生してしまう可能性もあります。
故障が起こると、発電量が低下したり、最悪の場合、発電せず、売電利益が減少してしまいます。それに加えて、設備の修理や交換費用の支出も生じてしまうので、大きな損失にもつながりかねません。そういったことを未然に防ぐためにも、定期的な保守点検やメンテナンスは欠かせません。

発電量の維持のため

太陽光発電の保守点検とメンテナンスの必要性としては、発電量の低下を防ぐという点も挙げられます。火災、台風、落雷、豪雨、豪雪といった自然災害によりソーラーパネルの破損、ケーブル配線の劣化、パワーコンディショナーの故障などのアクシデントが起こってしまうと、正常に発電が行われません。
また、ソーラーパネルに付着したホコリや汚れ、鳥の糞、落ち葉や木の枝などが原因で発電効率を低下させるケースも考えられますし、ネズミなどの小動物にケーブルをかじられて発電できなくなってしまうことも…。発電量をきちんと維持していかないと、売電利益は減少していく一方なので、こまめな点検でチェックしておくべきでしょう。清掃を含めたメンテナンスも行っておけば、より安心度はアップするはずです。

近隣トラブルや第三者への損害リスクの回避のため

太陽光発電を運用していく上で必ず注意しておかなければいけない点として、第三者への損害リスクがあります。例えば、台風によってソーラーパネルが吹き飛ばされ、第三者に当たってケガを負わせてしまったなんてことが起ってしまう場合もあるかもしれません。そうなると、ソーラーパネルの修理費だけではなく、被害者への賠償責任が発生してしまう可能性も出てきます。ケガの治療費はもちろん、訴訟問題になってしまった際の弁護士費用などの支出が生じるケースも…。
また、周辺の建物や所有物を損壊するようなことになると近隣トラブルにも発展しかねません。定期的に保守点検やメンテナンスをしっかりと行うことが、事故が起こる確率を減らす一番の近道と言えるでしょう。

■太陽光発電のメンテナンス・点検の種類と費用相場

太陽光発電の運用を安心安全に行い、きちんと売電利益も確保していくためには、保守点検とメンテナンスは欠かすことができません。しかも、メンテナンスの義務化も呼びかけられている今、その必要性はより高まっていると考えられます。そこで気になってくるのが、点検やメンテナンスにはどういったものがあるのかという点とおおよその費用ではないでしょうか。そこで、太陽光発電の保守点検やメンテナンスの種類と費用相場について、いくつか紹介していきます。

掃除・清掃の種類と費用相場

ソーラーパネルの表面は、土埃や砂埃、鳥の糞、落ち葉や木の枝などで汚れてしまうことも多いです。これらの汚れが原因で、発電量の低下や発電停止といった事態を招くケースもあります。雨で流れ落ちるのではないかと感じるかもしれませんが、こびりついた汚れは簡単には落ちないもの。専門の業者などに依頼し、洗浄機器を使ってきちんと清掃のメンテナンスを行うことが重要でしょう。
ソーラーパネルの清掃は、基本料金+パネルの枚数分の金額が一般的です。基本料金は数万円でソーラーパネル1枚あたりの費用は約300~1,000円というケースが多く見られます。機器を使用するのか手作業なのかなど、洗浄方法によって料金が異なってくることも多いようです。

機器の定期点検・メンテナンスの種類と費用相場

住宅用太陽光発電(10kW未満)のメンテナンス費用の相場は1回2万円程度と言われていて、改定前のガイドラインに沿って、4年に1回の頻度で実施しているケースが多いようです。産業用太陽光発電(50kW未満)のメンテナンス費用の相場は、点検の回数や内容にもよりますが、年間10万~20万円。頻度は年に1回が目安となっています。
産業用太陽光発電(50kW以上)のメンテナンスの費用の相場は、年間100万~200万円/MW。高圧発電所に関しては、主任電気技術者が年2回のメンテナンスを行うことが義務づけられています。さらに、年1回の精密点検も行うと、メンテナンス頻度は年3回と考えられるでしょう。

点検で故障が見つかった場合の修理・部品交換費用

保守点検によって故障が見つかった場合には、修理や部品の交換などを行わなければいけません。メーカー保証によって修理費が無償になったり少しの金額で済んだりするケースもありますし、火災保険に加入していれば自然災害による破損などは補償してもらえる可能性もあります。ただ、メーカー保証の期間外や範囲外の故障、火災保険の適用外の故障であった場合は、自費での修理や交換が必要になることもあるでしょう。
例えば、パワーコンディショナーを交換する場合、工事費込みの金額として、住宅用や低圧で40万円、高圧で10万~100万円、特別高圧に関しては500万~600万円が相場と言われています。部品交換のみの場合は、工事費込みで5万~10万円が一般的な目安となっています。

■自分でできるメンテナンスと専門家に任せるもの

保守点検とメンテナンスの重要性はわかっていても、それなりに費用がかかるため、自分でメンテナンスをしたいと感じる人もいるかもしれません。ただ、専門業者でなければできないものもあるので、全てを自分で行うのは難しいです。費用削減のためにも自分でできるメンテナンスは自分で行いたいと考えるのなら、自分で行えるものと専門業者に任せるべきものをまずは確認しておくことが大切です。

自分でできる太陽光発電のメンテナンスとは…

自分でできるメンテナンスとしては、目視で行う日常点検があります。ソーラーパネルの周辺に影になるようなものはないか、ソーラーパネルの破損や極端な汚れ、接続箱の汚れや腐食、パワーコンディショナー外箱の腐食や破損、パワコン内部の異音や異臭、パワーコンディショナーにエラーメッセージが出ていないか、フェンスの損傷などが、主に確認するべきポイントになります。

雑草対策の草刈りも自分で行えるメンテナンスです。ただ、電気系統に近い部分は危険ですし、草刈り機でケーブル配線を誤って切ったり、飛び石で機器を損壊させたりする可能性もあるので、そういった点には十分に注意してください。また、自分で点検やメンテナンスを行い、何か異常を見つけた際には、強引に自分で解決しようとせずに専門の業者に相談したほうがいいでしょう。

専門家に任せるべき太陽光発電のメンテナンスとは…

専門業者に任せるべきメンテナンスは、電気点検や電気系統を扱う作業です。これらは感電のリスクを伴うものであるので、電気の専門家やプロでないと行うことができません。太陽光発電のメンテナンスの大半は電気系統の点検になるので、やはり専門業者に依頼するべき部分はかなり多くなるものです。
ソーラーパネルの洗浄も専門業者に依頼したほうが安全です。水道水で洗浄してしまうとカルキや水垢が残り、逆に悪影響を及ぼす場合もありますし、住宅用の場合は屋根の上に登っての作業になるので、転落の危険性も出てきます。専門家ではない人がいろいろと機器に触ると、それが原因で故障につながるケースも考えられます。

専門家に依頼する際はメンテナンスの認定資格保持者へ

専門家に太陽光発電のメンテナンスを依頼するのであれば、「太陽光発電メンテナンス技士」の資格を持っている人がおすすめです。一般社団法人・太陽光発電安全保安協会(JPMA)が提供する資格で、太陽光発電システムの保守や管理を行うための基礎的な知識、機器の取り扱い、データの測定、清掃技術などを習得しているため、点検やメンテナンスから清掃まで安心して任せることができます。

■まとめ

太陽光発電を安全に長期的に運営していくためには、「保守点検」と「メンテナンス」は必要不可欠。2017年よりメンテナンスの義務化も呼びかけられているので、きちんと定期的に行っていくことが重要です。メンテナンスを行ってくれる専門業者をどのようにして見つければいいのかがわからない場合には、メンテナンスや管理などをまとめて行ってくれるO&Mサービスもあるので、そういったサービスを活用するのがおすすめですよ。

 

参考:
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/setsumei_shiryou.pdf
https://enetech.co.jp/guide/solar-power-maintenance/
https://nj-enex.co.jp/column/1092/
https://www.j-pma.jp/%E5%A4%AA%E9%99%BD%E5%85%89%E7%99%BA%E9%9B%BB%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%B9%E6%8A%80%E5%A3%AB%E8%B3%87%E6%A0%BC/

 

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