シーズン到来、「台風」の脅威に備える方法
投稿日:2022年8月20日 | 最終更新日:2024年8月5日
│災害対策│
大小さまざまな規模で続発する地震、穏やかな風景が突如として一変する噴火、そしてもはや毎年の恒例と化した酷暑。自然の脅威が身にしみる昨今ですが、近年は集中豪雨や河川の氾濫など水にまつわる災害がとみに増えているように感じます。特に、いよいよシーズン到来の台風は、規模の大型化が顕著。「大型で強い勢力の〜」という表現も、すっかり聞き慣れてしまった感があります。
しっかり施工されているとは言え、板状の太陽光パネルが浮かせて状態で並ぶ野立ての低圧太陽光発電所は、素人目にも強風と相性がよさそうには見えません。実際、暴風雨が猛威を振るう大型台風は、まさに天敵のひとつ。そこで、今回は主な被害の内容から対処のための準備までを駆け足で眺めてみましょう。
台風による主な被害
事業用太陽光発電所は、電気事業法上の事故報告義務が課せられています。これまでは50kW以上の高圧太陽発電所に限定されていましたが、2021年4月の法改正で10〜50kW未満の低圧施設も対象となりました。これらの報告は経済産業省が取りまとめて公表しており、インターネットで閲覧できます。
たとえば、平成30年の台風21号の発表資料によれば、合計23の太陽光発電事業所で被害が発生。うち20件が強風によるもので、特にソーラーパネルやパワーコンディショナーの損傷が目立ちます。では、台風上陸時には主にどんな被害に晒されるのでしょうか。
❶ パネルや機器などの脱落・崩壊
その形状から容易に想像できますが、大型台風が直撃した場合、まず太陽光パネルが吹き飛ばされる可能性を考慮しなければなりません。パネル自体はJIS(日本産業規格)の規定で2400Pa(風速62m/s)もの強風を想定しており、また取り付け強度も厳格に規定されてはいますが、さまざまな要因で架台から脱落したり、あるいは架台の一部ごと引き剥がされることもあります。
もちろん施工不良も原因のひとつとなりますが、しっかり締めつけられていたボルトが経年で緩んだところを暴風が襲うこともあります。メンテナンスを怠ると被害に直結しますので、日常的な点検を欠かさないことが重要です。
❷ 飛来物・落下物・倒壊物の激突
強風によって吹き上げられた住宅の屋根などが運ばれてくればパネル1枚が割れる程度では済みませんし、架台を直撃すれば構造が歪んで全体が不安定になることもあります。飛んできた物の種類や速度、当たりどころによっては一撃でパネルが外れ、吹き飛ばされる事態もないとは言えません。また、敷地周辺の樹木や電柱の倒壊などのほか、自施設構内の設置物の損壊や地面に敷いた砂利の飛散などが原因となることもあります。
❸ 地滑りや土砂による被害
山間部に設置した野立て太陽光発電所では、局地的な豪雨に襲われた場合は地滑りが起きる可能性もあります。基礎がコンクリートで、適切な施工が行われていれば十分な強度が確保されているはずですが、もともと軟弱な土地で地盤が変形すれば基礎ごと崩れる事態も考えられなくはありません。また、押し流されてきた土砂などが架台に歪みを生じさせる可能性もありますので、油断は禁物です。
❹ 冠水による電気系統の故障
近年の大型台風では、豪雨や河川の氾濫による冠水被害が多数報告されています。土地勘のない場所に野立ての太陽光発電所を建設する場合は、事前に国土交通省や各自治体が公表するハザードマップなどで浸水や水没の可能性を調べておくべきでしょう。なお、機器の中には水没すると接触不良やショートの原因となるものもあり、最悪の場合は出火や感電事故を引き起こす可能性もありますので、注意が必要です。
台風前の太陽光発電の点検のポイント
台風シーズンが近づくと、システムの点検が重要になります。太陽光パネルの耐風圧が「JIS C 8990」で定められている2,400Pa(風速62メートル/秒)に対応しているかを確認し、施工が規格通りに行われているかもチェックする必要があります。メーカー保証と保険の確認を忘れずに。多くのメーカー保証は製品の不具合に対するもので、自然災害は対象外の場合があります。動産総合保険や賠償責任保険などに加入している場合は、カバー範囲を確認し、必要なら保険の見直しを検討しましょう。定期的な点検とメンテナンスも重要です。固定部分の緩みや歪みがないか、太陽光パネルや配線の損傷がないかを点検し、必要なら修理や補強を行います。
台風の被害に適用される保険
台風被害から守るためには、適切な保険への加入が不可欠です。まず、火災保険があります。これは自然災害や盗難などから設備を守るもので、普通火災保険、動産総合保険、企業向け包括保険などが含まれます。次に、施設所有者賠償責任保険があり、これは太陽光発電設備が飛散して第三者に損害を与えた場合に備える保険です。また、休業損害補償保険は、自然災害などで発電が停止した際の売電収入の損失を補填するものです。近年は台風の勢力が増しているため、各種保険の内容を事前に確認し、適切なカバー範囲を設定することがとても重要になります。
被害発生時の対処法
経済産業省では、台風などの自然災害に備える太陽光発電事業所のチェックポイントをリストアップし、注意を喚起しています。とは言え、専門機器の集合体であるだけに、点検にも特別な知識が必須となりますので、施工業者やO&M(オペレーション&メンテナンス)業者に依頼するのが現実的でしょう。
ただし、いざという時に混乱することにないよう、予め「万一の際には何を行うのか」を知っておくのは重要なことです。ここでは、大型台風の直撃などで太陽光パネルに被害が出た場合の対処を見てみましょう。
❶ 被害状況の初期確認
まずは台風が過ぎ去るのを待つことが何よりも重要。安全を確保できない環境下での作業は厳禁です。風雨が収まったのを確認次第、現地で被害状況のチェックに入ります。発電量のデータで状況を想定し、破損した設備がある場合は不用意に近寄らず、目視でパネルや機器類の損傷の有無などを判別します。
❷ 電源のシャットダウン
設備に破損が見られる場合、問題となるのはパネルだけではありません。配線ケーブルが断線している場合などは、漏電による出火や感電事故などの二次被害を生む危険があります。そこで、初期確認が終了次第、可能であれば発電設備の電源を落とします。停止すべき部位を判断の上で絶縁などの対策を行い、詳細な点検に映ります。もちろん安全を確認しながらの作業となりますので、必ず専門知識を持つ業者などが行います。
❸ 修理・交換・廃棄の手配
強風で飛ばされて地面に激突した太陽光パネルや飛来物で破損した機器・部品類など、修理が困難な場合は交換品の手配を行います。同時に廃棄の手続きを進めることになりますが、太陽光発電モジュールは環境省によるリサイクルやリユースのガイドラインが策定されていますので、適切な業者に回収を依頼しなければなりません。この間、システムを停止していても、ケーブルに発電済みの電気がケーブル内に残存していたり、雨水が浸水したりすると感電の危険性がありますので、細心の注意が必要です。また、周囲に人家などがある場合は、張り紙などで注意喚起することも必要になるでしょう。
台風被害の焦点
災害は、いつでも起こり得るもの。頭では理解していても、ついつい「後回し」にしてしまうのが人情です。太陽光発電投資に向き合う姿勢によっては、台風の被害を受けた時、初めて「備え」の重要性を痛感する方も多いことでしょう。中でも、以下の2点については、パネルや機器の直接的な被害と同じくらい、場合によってはそれ以上に頭が痛い難題に。まさに「問題の焦点」となります。
❶ 修理・交換の保証はあるのか
台風によって設備が被害を受けた際は、上記のような修理・交換作業でコストがかかります。金銭的な損害をカバーするには保険を活用したいところですが、まず、製品及びシステムなどのメーカー保証については、原則として初期不良や製造上の不具合に起因する故障が対象。また、施工会社の保証も施工ミスに限定されるため、自然災害による故障や損壊については保証されません。
ひとつ、金融機関や施工業者が用意するソーラーローンの類いを利用した場合は、動産総合保険や機械保険が付帯している場合があります。しかし、こちらは補償範囲とともに期限にご注意を。5年、あるいは10年で解約となるのが一般的なので、それ以降は自力で保険に加入していなければなりません。
❷ 誰が復旧作業を指揮するのか
こちらも、実際の被災時には大問題となります。上記のような復旧準備を誰が行うのか。自宅から遠く離れている場合が多い低圧太陽光発電所に出向き、現状を把握して、各業者に適切な指示を行うのは誰か。
近年のO&Mサービスでは、常時モニタリングの上で異常を検知次第、現地に駆け付けてくれるメニューが用意されています。しかし、現場ですべてを判断できるだけの専門知識を持つスタッフを抱えるサービスは少なく、ほとんどの場合は出動回数に制限が設けられています。台風は年間に複数上陸しますが、2回目以降は有料となると、収支にも影響しかねません。
低圧・高圧に関わらず、時に太陽光発電所に甚大な被害を及ぼす台風。重要なのは、被害が及ぶ範囲を可能な限り低く抑える保守運用と、万一の被災時に滞りなく復旧に臨める準備です。そこで弊社では、運用監視と緊急対応、そして保険による保証をセットにした独自のO&Mサービスをご用意しています。
台風対策としてのO&Mサービス
● 独自O&Mサービス『om’s(オムズ)』とは
2021年10月現在、全国約8,500か所の太陽光発電所でソーラーモニターの導入実績を有する、国内でも代表的なO&Mサービスのひとつです。日々の稼働の監視やメンテナンス、現地での目視による点検や有事の駆け付け・緊急対応のほか、台風を含む一部自然災害※1や電気的・機械的事故などの補償対象、売電補償※2と各種保険までをワンストップで組み込んでいるのが大きな特徴です。
om’s(オムズ)のサービス範囲は、大きく分けて以下の4つとなります。
- ❶ 運営中の発電所に専用の遠隔監視機器を設置。
- ❷ 遠隔監視機器を稼働、発電状況を常時モニタリング。
- ❸ 異常発生を確認次第、専門スタッフが速やかに現地に駆けつけ。
- ❹ 状況をその場で判断の上、必要な手配や保険対応の準備を開始。
台風の上陸中に発電データに異常が認められた場合、上記の通り、台風の通過を待ってスタッフが現地に駆け付けます。ここで大きなポイントとなるのが、担当スタッフのスキルです。その場で状況を判断し、必要な緊急対応が完了次第、直ちに復旧フェーズへの移行を準備できるだけの専門知識を有しています。
また、om’s(オムズ)が付帯する保険は台風による被害も対象範囲となりますが、保険会社との折衝や必要書類の準備、さらには請求業務に至るまで一連の業務を丸ごと代行します。面倒な手続きは一切不要ですので、オーナーは自宅から動かず報告だけをお待ちいただけます。
● 複数の大型台風の直撃にも対応
om’s(オムズ)の現地駆け付けのもうひとつのポイントは、回数が無制限に設定されている点です。年間で2回目以降は有償対応となる多くのO&Mサービスとは異なり、たとえば初夏と秋に別の台風が直撃し2度の被害を受けたとしても、そのつど駆け付けサービスを提供。もちろん保険も利きますので、可能な限り当初の売電計画から逸れない安定した運営が可能となります。
● サービスメニューについて
om’s(オムズ)では、会員制の『om’s club』から事業スタイルに合わせて選択できる各種プランをご用意しています。低圧発電所向けでは、以下の3コースからお選びいただけます。
- ❶ om’s(オムズ)プレミアム:月額17,380円(税込)
- ❷ om’s(オムズ)ゴールド:月額10,780円(税込)
- ❸ om’s(オムズ)ベーシック:月額9,680円(税込)
いずれのプランも現状確認費用として申込時のみ110,000円(税込)がかかります。それぞれメニューは異なりますが、月額費用の中に保険代金が含まれるのは共通しています。また、草刈り(刈り倒し)をオプションでご用意するほか、雑草対策は個別にご相談いただくこともできますので、お気軽にお問い合わせください。
※1:om’s(オムズ)で提供する保険は、地震・津波・噴火、戦争・テロなどによる被害は対象外となります。※2:自然災害が原因で売電が停止した場合に最大で日額10,000円を補償。免責は3日間、最長1か月となります。
詳細は別途お問合せください。