太陽光発電ローン、利用の前に考えたいこと

2022年6月12日

比較・選び方

前回は窃盗の手口や対策についてご紹介しましたが、太陽光発電所の経営にはほかにもリスクがつきまといます。投資先としては魅力にあふれているとは言え、長期的に利益を確保し続けていくためには、ほかの投資商品と同様に「何が起こり得るのか」「どんな対策が要るのか」を考えておく必要があります。

太陽光発電所の導入には大きな資金の調達が必要となりますが、現在は各金融機関が積極的に対応しています。比較的「気軽に」借り入れを相談できますが、事業計画を軽視して「気楽に」活用すると、のちのち失敗を招くこともあり得ます。そこで今回は、安定した売電事業に必要な要素についてチェックしてみます。

ソーラーローンの魅力とリスク

太陽光発電システムの設置には、多額の初期費用がかかります。条件によって大きく異なるものの、住宅用のシステムであれば150万円前後から検討可能ですが、土地から新規で取得して野立てによる産業用の設備を設置する場合は1,000万円を超えるのが一般的です。地価が安い山間部でも、逆に土地を広く取得できることから結果的に投資規模が膨らみがちとなりますので、手元資金に余裕のある方でなければ多くの場合はローンを活用することになるでしょう。

太陽光発電所の建設には、多くの金融機関が専用のローンプランを用意しています。まずは、このローンの基本から確認しておきましょう。

●ソーラーローンとは

住宅用・産業用の太陽光発電システムの導入にまつわる資金需要の高まりから、各金融機関では専用の融資プランが用意されています。これらは一般に「ソーラーローン」と呼ばれ、売電で得る収入をローン返済の原資に充てることが想定されています。収益事業を展開しながら借入金の返済を進めるという性格はマンションなど不動産の賃貸経営に近いイメージを思い浮かべますが、いくつかの点で明確な違いがあります。

まず、ご存じの通り、太陽光発電には国が定める固定買取制度(FIT)があります。買取価格などの条件は年度によって変化しますが、20年間にわたり安定した収入を期待できるため、金融機関にとっては安心感が大きい融資先と言えます。実際、上記期間中はマンション経営のような空室リスクが発生せず、発電の設備自体が担保になり得る太陽光発電所への融資は比較的審査が通りやすいとされており、金利面でも優遇されています。

初期費用を抑えることができるだけでなく、手元資金のみでの展開に比べて事業規模の拡大の道もワイドに開かれるソーラーローンの活用。相談先の金融機関は、主に以下の3つがあります。

❶ 日本政策金融公庫

政府出資100%の金融機関、いわゆる「公庫」の公的融資です。低金利が魅力ですが、主に創業時の資金調達需要を想定するサービスですので、綿密な事業計画書を作成の上で面談による審査が必須となります。創業の動機や返済計画の説明から保証金の用意まで、ハードルは高めと言えます。

❷ 都市銀行・地方銀行・信用金庫

最も身近な金融機関ですが、ご存じの通り大手都市銀行の場合はやはり審査基準が厳しめで、ある程度の年収水準や勤続年数など一定の信用力が求められることになります。その点、地方銀行や信用金庫など地場の金融機関はメガバンクほど厳格ではない場合が多く、チャンスが広がります。

❸ 信販会社

信販会社が提供するソーラーローンは、個人でも審査が通りやすい点が大きな特徴。金利はやや高めですが、銀行で融資困難だった条件でも借入可能となる場合があります。システムの販売会社などが代行するため手続きもスムーズですが、その会社が提携する信販会社を利用することになります。

そのほか、各自治体の融資制度やJAバンクなどでもソーラーローンを扱っている場合があります。補助金・助成金なども含め、非化石・再生可能エネルギー設備である太陽光発電所は官民ともに導入支援姿勢が強まっていますので、しっかりとした事業計画があれば融資へのハードルは高くないと言えるでしょう。各金融機関で細かな違いはありますが、最長で20年間と長期返済も可能なので、キャッシュフローに余裕を持たせたゆとりの経営も夢ではありません。

ポジティブな視点の話が続きましたが、利点ばかりではありません。融資を受けての投資である以上、一定のリスクがあることも折り込んでおかなければなりません。

● ソーラーローン活用の注意点

ローン活用のネガティブな要素と言えば、反射的に支払利息が頭に浮かぶ方も少なくないでしょう。たとえば、1,000万円を2.5%の固定金利、15年間の返済期間で借り入れた場合は支払利息の総額は約200万円となりますが、同時に売電収入もありますので、最適な収支バランスを練りたいところ。専門家に相談すれば、きっとベストな提案を受けることができるでしょう。

それよりも、事前に考慮しておかなければならないのは、返済期間中の発電停止リスクです。何らかの原因で発電量が低下したり、システムが稼働を停止した場合は、見込んでいた売電収入が得られなくなります。ソーラーローンを利用する場合は返済の原資でもあるので、売電収入が減って月々の返済額を下回ることになれば、ほかの収入や貯蓄から自力で補填しなければならなくなります。ましてや、復旧不能な被害を被ったら…。

綿密な返済シミュレーションを立て、それを実行することができれば、ソーラーローンの活用は比較的リスクが低い資金調達法と言えます。しかしながら、お金を借りて事業を行う以上は、事前に引いた計画を乱す「まさか」も起こり得ることを想定しておく必要があります。これは、いずれの投資法にも言えることです。

● 収支計画に影響するリスクについて

太陽光発電システムの発電量が低下・停止する理由は、実は少なくありません。設備の故障・異常・事故などは、大きく分けて以下のような原因が考えられます。

  • ・自然災害
  • ・施工不良
  • ・メンテナンス不足
  • ・犯罪被害

細かく見ればキリがないほど多様な「想定外」のケース。災害や盗難などの大事でなくても、たとえばパワーコンディショナーなど機器が故障しただけでも発電量が大幅に低下することがあり得ます。修理や交換にはある程度の期間が必要な上に費用もかかりますので、収支計画に影響する事態も考えられます。

いずれの原因であっても、きめ細かな監視やメンテナンスなど事前に運用の環境を整えておけば、多くのトラブルは回避または被害を軽減することができます。たとえ避けようのない自然災害であっても、予め保険に加入していれば被害の原因によっては補償を受けることができるので、長期的な投資計画から大きく逸れずに経営を続けることも不可能ではありません。

というわけで、次はその「保険」についてご紹介します。

ソーラーローンと保険について

安心感が高いとは言え、リスクゼロとはいかない太陽光発電投資。そこで、多くの金融機関が用意しているソーラーローンでは、動産保険や休業補償保険を付帯しています。対象の範囲であれば、万一の際には補償を受けることができますが、注意したいのが保険期間です。

● 注意すべきは保険期間

ソーラーローンの付帯保険は、その多くが保険期間を10年程度に設定しています。なかなか長期間のようにも感じますが、これはちょうどFIT制度による売電期間の前半部分ということになります。では、この契約期間を過ぎた後、すなわち売電期間の後半部分はどうなるのでしょうか。ここでは、保険にまつわるいくつかの話題をご紹介します。

❶ 10年後の「無保険状態」

契約期間を過ぎると、太陽光発電所は丸ごと無保険状態と陥り、リスクを丸抱えすることになります。言うまでもなく極めて危険な状況ですが、ソーラーローンの付帯保険サービスという性質上、期間延長などの措置は準備されていないことが多いようです。したがって、期間切れを見計らって別途、動産保険や休業補償保険、賠償責任保険などに加入する必要がありますが、これは同時に運営コスト増を意味します。ソーラーローンの返済月額に加算する形で月々の保険料が発生することになりますので、予め想定しておくべきでしょう。

❷ 保険加入の努力義務化

再生可能エネルギーの固定価格買取制度=FIT制度は、2012年7月にスタートしました。今夏で10周年、すなわちこれから保険期間が満了となる太陽光発電所が出始めることになります。経産省資源エネルギー庁のWEBサイトで閲覧できる『平成29年度 新エネルギー等の導入促進のための基礎調査』によれば、低圧太陽光発電所の保険加入率は68%。この時点で3割以上が未加入の上に、これから期限切れの施設が続出することが予想される中、2020年に改定された太陽光事業計画策定ガイドラインでは保険加入の努力義務が明示されました。

❸ O&Mサービスの保険プラン

個人で太陽光発電事業を推進する場合、一般的にO&M(オペレーション&メンテナンス)サービスを利用するケースが大半です。契約する業者や加入するプランによって内容は大きく変わりますが、中には最初から発電量の低下を折り込んで、監視やメンテナンス、現場対応とともに保険にも重点を置いたサービスもあります。

ここでは野立てによる低圧太陽光システムの運営をサポートすることに特化した弊社独自のO&Mサービス『om’s(オムズ)』を例に、利回り低下リスクの回避法を考えてみましょう。

補償も対応もワンストップのO&Mサービス

● 独自O&Mサービス『om’s(オムズ)』とは

om’s(オムズ)は、弊社独自に関連サービスをひとまとめにした総合的なメンテナンスパックです。10kW以上50kW未満の低圧太陽光システムが対象で、日々の稼働の監視やメンテナンス、現地での目視による点検や有事の駆け付け・緊急対応のほか、機器の故障や設備の破損、盗難対策、さらには自然災害にまで対応するサービスが最初からワンストップで組み込まれているのが最大の特徴。2021年10月現在で、全国約8,500か所の太陽光発電所でソーラーモニターの導入実績を有する代表的なO&Mサービスのひとつです。

om’s(オムズ)のサービス範囲は、大きく分けて以下の4つとなります。

  • ❶ 運営中の発電所に専用の遠隔監視機器を設置。
  • ❷ 遠隔監視機器を稼働、発電状況を常時モニタリング。
  • ❸ 異常発生を確認次第、速やかに現地に駆けつけ。
  • ❹ 被害状況を確認し、保険対応へと移行。

ここでは、有事のローン支払への影響を回避するための方策となり得る保険について詳しく見てみましょう。

● om’s(オムズ)の保険:補償範囲と対応

om’s(オムズ)では、一部の自然災害まで補償範囲に含めた保険※もワンセットになっています。システム代金が対象で、たとえば2,000万円で購入した土地付き物件で、土地部分の代金が200万円であれば、保険金額は1,800万円となります。

提携先の引受保険会社は大手の損保ジャパン株式会社で、次のような事故が主な保険対象となります。

  • 落雷、風災、雹災、雪災
  • 火災
  • 台風
  • 盗難
  • 外部からの物体の落下・飛来・衝突
  • EM保証(電気的・機械的事故)・売電保証

om’s(オムズ)の場合は補償だけでなく対応も含むのが大きなポイントです。常時モニタリングで異常を感知した際には、太陽光発電システムに精通した専門スタッフ自身が現地に駆けつけ、被害を確認次第、その場で通報や復旧作業指示に移ります。この時、並行して保険会社への請求手続きに備えた行動を取り、その後の交渉や手続きの窓口対応まで一切をお任せいただけます。

● om’s(オムズ)の保険:EM補償と売電補償

上記の補償範囲で特にご注目いただきたいのは、自然災害以外の事由にまで及んでいる点です。

まず、電気的・機械的事故を補償対象とするEM保険が付帯。落雷などによるショートや漏電による機器の故障など外的要因に起因する電気的・機械的事故は、発電施設では対策が必須。一般的な動産保険ではカバーされにくい分野でもありますので、これが最初からセットになっているのは大きな安心材料のひとつとなるでしょう。

もうひとつ、売電補償もポイントのひとつです。自然災害が原因で売電が停止した場合に、1日あたりで最大10,000円を補償。 免責が3日間、最長1か月という条件付きながら、上記のような事態に遭遇した際、復旧作業を進める間の一時的な収入減を食い止めながらローン返済を続ける上では心強い存在となるはずです。

O&Mサービスはよく似た内容に見えますが、メンテナンス=運用および保守点検だけでなく、問題発生時の対処や補償の面でも大きな違いが生じます。特にソーラーローンを活用して売電事業を行う場合は、ひとつの問題が収支計画に直結するため、対策の有無で利回り低下の要因ともなりかねません。

専用機器によるモニタリングだけでなく、問題発生時に専門家が現地に急行して自律的な判断の上で適切な行動を取る駆け付けサービス、そして損害発生時のダメージの軽減策を組み込んだom’s(オムズ)は、「長期にわたり、いかに安定した売電環境を維持するか」という視点で設計されています。サービスメニューは、以下の3種類をご用意しています。

● サービスメニューについて

om’s(オムズ)では、会員制の『om’s club』から事業スタイルに合わせて選択できる各種プランをご用意しています。低圧発電所向けでは、以下の3コースからお選びいただけます。

  • ❶ om’s(オムズ)プレミアム:月額17,380円(税込)
  • ❷ om’s(オムズ)ゴールド:月額10,780円(税込)
  • ❸ om’s(オムズ)ベーシック:月額9,680円(税込)

いずれのプランも現状確認費用として申込時のみ110,000円(税込)がかかります。それぞれメニューは異なりますが、月額費用の中に保険代金が含まれるのは共通しています。また、標準サービスのほか、草刈りやパネル洗浄、ドローンによる赤外線検査などオプションサービスも充実していますので、ぜひ詳細をご確認ください。

※om’s(オムズ)で提供する保険は、地震・津波・噴火、戦争・テロなどによる被害は対象外となります。詳細は別途お問い合せください。

一覧へ