なぜ必要? どう選ぶ? O&Mサービス

2023年5月24日

保険

野立ての低圧太陽光発電所は、設置が完了して運用が始まれば、トラブル発生時の対処以外のメンテナンスはあまり手がかからないというイメージをお持ちの方が少なくないようです。確かに、現代の機器や設備は性能も品質も高いものが多いので、初期不良や災害時の事故など、よほどのことがなければ安定稼働してくれるはず…と期待したくなるのも分かります。

しかし、現実は、そうではありません。では、実際にはどの程度の頻度で、どんなメンテナンスが必要になるのか。今回は、保守点検の実情とそれに合わせたO&M(オペレーション&メンテナンス)サービスの選び方などについて解説します。

太陽光発電と保守点検・メンテナンス

❶ メンテナンスは「義務」です

かつて、「太陽光発電はメンテナンスフリー」という認識が広まった時代もありました。これから今回の投稿記事をお読みいただければお分かりの通り、これはまったくの誤解。と言うか、必要か否かの議論の前に、法的に決められています。2017年4月1日施行の改正FIT法により、50kW未満の非FIT型の施設を除く太陽光発電所でメンテナンスの実施が義務化されているのです。

法律はさて置いても、太陽光発電システムは時間経過による設備・機器の劣化は避けられず、発電量も低下していきます。安全で効率のよい発電環境を長期間にわたり維持していくためには、メンテナンス計画がとても大切。トラブルを最小限に抑えて売電機会の損失を防ぐためにも、法令点検以外でもすすんで臨む意識を持っておきたいものです。

❷ メンテナンスを怠るとどうなる?

野立ての太陽光発電所に設置される発電機器の多くは、長期にわたり屋外で直射日光や風雪雨に晒され続けます。ご存じの通り、近年は災害級の気象変化も頻繁にあり、事故や故障などによる発電量の低下、時には発電停止に見舞われることも珍しくありません。こうした際に、日頃の保守点検やメンテナンスを怠っていると「防げたはずの被害」を被る原因ともなり得ます。

❸ メンテナンスの目的と効果

言うまでもないことではありますが、ここでは保守点検やメンテナンスの目的について整理しておきましょう。

● 安全確保

設備や機器の劣化を放置した状態で自然災害に見舞われると、被害は拡大しがちです。また、太陽光パネルの表面の汚れや送電ケーブルの損傷、パワーコンディショナーの不具合などは、最終的に発火の原因になることもあります。メンテナンスを怠ると、機器や設備に不具合が生じ、安全を脅かされた結果として経済的な損失につながるリスクが高まるのです。

● 発電ロス防止

さまざまな理由で発生する発電効率の低下は、そのまま売電収益の低下へと直結します。太陽光パネルは設置10年ほどで発電効率が下がり始め、20年後には15〜20%ほどのロスが発生するとも言われているので、これをできるだけ食い止めるためにも設備・機器の定期的な点検が不可欠。加えて、遠隔監視機器で発電状態を日常的にモニタリングしておけば、不測の事態が発生しても速やかに対処し、ロスを最小限に留めることができます。

● 災害対策

地震や台風の際には太陽光パネルが脱落したり、架台が崩落するケースがありますが、すでに劣化していた箇所を予め修理・補強しておけば起きなかったと考えられる事故も少なくありません。野立ての太陽光発電所は現場の状況を日常的に確認することが困難な場合が多いだけに、定期的なチェックの機会が欠かせないのです。

● コストダウン

たとえば事故で太陽光パネルが破損した場合、数枚程度でも損害額は数十万円規模になることもあります。寿命が長いとされるパワーコンディショナーも、簡単な修理なら数万円で済むところ、不具合を長く放置して故障・交換となれば数十万円もの出費となります。日頃から細かく保守・点検しておけば、こうした将来的な費用の発生を食い止めることができます。

メンテナンスの具体的な内容

では、低圧太陽光発電所の保守点検やメンテナンスでは、どんな作業が発生するのでしょうか。ここでは簡単に紹介しましょう。

❶ 初めての保守点検

定期点検の前に、売電事業の開始から初回の保守点検は、その後の運用のためにも特に重要となります。機器や部材に不良品はないか、すべてが適切に施工がされているかといった初期不良の確認機会ともなりますので、実務は業者に依頼するとしても、ひとつのプロジェクトとして取り組むべきでしょう。

なお、初回の保守点検時のデータは、その後の運用状況の指針ともなります。その後、機器の劣化などで発電量が低下した場合には保証期間を待つことなく交換に踏み切るなど、積極的に対応するための資料として活用できます。

❷ メンテナンスの内容と頻度

太陽光発電施設の点検項目については、一般社団法人日本電機工業会と一般社団法人太陽光発電協会の「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」に記載されています。内容は、太陽光パネルの状態や固定の状況、ケーブルや接続・接地の状況、パワーコンディショナーの状態など多岐にわたりますが、このガイドに従えば点検の基準はクリアできるはずです。

義務づけられている定期点検は年に1回程度の頻度で行います。また、地震や台風、落雷などの際は、安全性を考慮してそのつど実施する必要があります。さらに、メーカーや施工会社の保証期間にあたる10年、20年といった節目も考えて点検・メンテナンス計画を立てたいものです。

❸ 保守点検とメンテナンスの違い

太陽光パネルや各種周辺機器など発電システムが通常通り作動するかをチェックする保守点検に対し、メンテナンスは設備・機器の手入れを行う作業となります。必要に応じて清掃や部品の交換を行います。

太陽光発電所は、太陽光パネルやパワーコンディショナー、送電ケーブルといった機器群の集まりですので、常に最適な発電量を維持するには、システム自体を良好な状態に保つことが重要です。しかしながら、いずれも高度な専門分野ですので、O&Mサービスを活用するのが現実的な選択となるでしょう。

定期点検とO&Mサービス

保守点検やメンテナンスは、太陽光発電について深い知識を有する専門業者が用意しているO&Mサービスを活用するのが一般的です。O&Mサービスとは、太陽光発電所の安定稼働をサポートするサービスの総称で、発電低下・停止による損失を防ぐのが第一の目的。日常的なモニタリングやトラブル時の対応、各種報告などを含んでいます。

もちろん、保守点検・メンテナンスについても大半のサービスの範囲内。ここでは定期点検の主な作業内容について、一例を挙げてみます。

❶ 保守点検の主な内容

● 太陽光パネルの点検

パネルの損傷はないか、部材の破断や破損はないかといった確認を行います。また、それとは別に、土埃や鳥の糞などの汚れを取り除くためにパネルの清掃・洗浄したり、夏の時期にはパネル周辺の草刈りが必要になることもあります。

● パワーコンディショナーの点検

配電・電線管の破損や異常音など動作の状況をチェックし、システムの異常の有無や経年劣化の進行具合を確認します。

● 架台の点検

基礎の歪みがないか、損傷箇所がないかを確認します。

❷ O&Mサービスを活用するメリット

法的な義務を全うし、計画に沿った売電事業を行うことを前提に多様なサポートを受けられるO&Mサービスは、こうした保守点検やメンテナンスを一任できるのが利点。そのほか、日常の発電状況をモニターする監視サービスから万一の事故やトラブル発生時の対応、さらには緊急性の高い問題が生じた場合の駆けつけ対応、点検・調査に伴う報告や対策の提案などを一契約で受けられるパッケージとなっていますので、心強い存在となることでしょう。

しかし、O&Mサービスのカバー範囲やその内容、価格設定やプラン構成は、各社で大きく異なります。実績や技術もまちまちですし、同じ名称のサービスメニューでも標準・オプションの解釈が違うこともままあります。契約を検討する際には、目的をしっかり見定めながら各社のサービスを吟味する必要があります。

O&Mサービスの選び方

❶ O&Mサービスの選び方

では、O&Mサービスはどう選べばよいのでしょうか。多くの商品で上記の「保守点検」や、日常の運転状況をモニタリングしてデータを提供してくれる「遠隔監視」、災害や障害発生時の「緊急駆けつけ」などのメニューが揃っていますが、たとえば最後の駆けつけサービスは「異常発生時に即座に対応してくれるか」「専門家が出向いてくれるか」となどの細部が業者ごとに大きく異なります。

また、別途費用がかかったり、緊急対応も回数の制限があり規定を超えると有料となるなど、安いように見えて後で高く付く商品も。さらに、営業部門など専門知識のないスタッフが現地に行ってもできることはありませんので、「専門スタッフが急行してくれるのか」「その場で対処できるのか」といった【品質】を確認するのが選ぶ際のポイントとなります。

❷ 独自O&Mサービス『om’s(オムズ)』とは

2021年10月現在、全国約8,500か所の太陽光発電所でソーラーモニターの導入実績を有するエナジー・ソリューションズ株式会社が提供する、国内でも代表的なO&Mサービスのひとつです。日々の稼働の監視やメンテナンス、現地での目視による点検や有事の駆け付け・緊急対応のほか、台風を含む一部自然災害※1や電気的・機械的事故などを含む売電補償※2付きの保険までをワンストップで組み込んでいるのが大きな特徴です。

om’s(オムズ)のサービス範囲は、大きく分けて以下の4つとなります。

  • ❶ 運営中の発電所に専用の遠隔監視機器を設置。
  • ❷ 遠隔監視機器を稼働、発電状況を常時モニタリング。
  • ❸ 異常発生を確認次第、専門スタッフが速やかに現地に駆けつけ。
  • ❹ 状況をその場で判断の上、必要な手配や保険対応の準備を開始。

上記の通り、O&Mサービスは【品質】が重要となりますが、❸の駆けつけサービスなら、その場で状況を判断して緊急対応を行い、完了後は直ちに復旧フェーズに移行できるレベルの知識を有する専門スタッフが担当します。また、年間で2回目以降は有償対応となる多くのO&Mサービスとは異なり回数制限がないことも特徴です。

もうひとつ、❹の「保険対応」もom’s(オムズ)独特のサービスです。上記の売電保証付きの保険を提供するだけでなく、保険代理店を介した保険会社との折衝から請求業務に至るまで、一連の業務を丸ごと代行します。

❸ サービスメニューについて

om’s(オムズ)では、会員制の『om’s club』から事業スタイルに合わせて選択できる各種プランをご用意しています。低圧発電所向けでは、以下の3コースからお選びいただけます。

  • ❶ om’s(オムズ)プレミアム:月額17,380円(税込)
  • ❷ om’s(オムズ)ゴールド:月額10,780円(税込)
  • ❸ om’s(オムズ)ベーシック:月額9,680円(税込)

いずれのプランも現状確認費用として申込時のみ110,000円(税込)がかかります。それぞれメニューは異なりますが、月額費用の中に保険代金が含まれるのは共通しています。また、草刈り(刈り倒し)をオプションでご用意するほか、雑草対策は個別にご相談いただくこともできますので、お気軽にお問い合わせください。

※1:om’s(オムズ)で提供する保険は、地震・津波・噴火、戦争・テロなどによる被害は対象外となります。※2:自然災害が原因で売電が停止した場合に最大で日額10,000円を補償。免責は3日間、最長1か月となります。
詳細は別途お問合せください。

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